三菱グループが「見放した」ワケ
債務超過転落や社長交代の発表があっても株式市場は格別の反応を示さず、株価は1800~1900円で推移していた。18年1月には3560円の高値をつけていた。というのも、市場関係者は大株主が支援すると判断していたからだ。筆頭株主は石油資源開発(持株比率30.97%)、第2位の株主は三菱マテリアル(20.05%)で、上位2社で51.02%を占める。両社は、日本海洋掘削を持分法適用会社と位置付けている。
特に三菱マテリアルは日本海洋掘削の設立当初からかかわっている。1960年代に政府が、原油の国内消費量の30%を自主開発とするとの目標を設定。その方針に従って67年に石油開発公団が設立され、翌68年に同公団の事業本部(現石油資源開発)と三菱グループが出資して海洋資源掘削がスタートした。初代社長は三菱鉱業(現三菱マテリアル)社長の大槻文平氏だった。
以来、石油開発公団が技術面、三菱グループが資金面の支援を続けてきた。三菱UFJ銀行がメインバンクで73億円を融資している。日本海洋掘削は、いわば国策会社だ。そのうえで三菱グループが面倒をみてきたので、「増資によってこの程度の債務超過は解消できる」とマーケットは読んでいた。そのため、債務超過となり、社長交代が発表されても、株価が動揺を見せなかったのだ。
ところが、突然の会社更生法適用申請。市川社長は6月22日に開いた記者会見で「大株主である石油資源開発や三菱マテリアルには、いつ頃から相談していたのか」と問われると、「1年半前から相談していた。大株主が(追加の)増資を受け入れなかった理由については、我々が知るところではない」と答えている。
三菱マテリアルは、昨年から品質データの一連の不正で窮地に立たされていた。債務超過となった会社への追加融資は株主に説明がつかないため、支援を打ち切ったとみられている。
三菱マテリアルの株主総会は6月22日に行われた。この株主総会終了後に日本海洋掘削は会社更生法を申請した。そのため、「三菱マテリアルへの忖度があったのではないのか」と深読みするアナリストも少なくない。