6月12日には、粉飾決算の疑いがあるとして、証券取引等監視委委員会が同社や落合正美会長の自宅に強制調査を行ったばかりだ。落合正美会長と妻の落合善美社長は民事手続きに一定のメドが立った時点で辞任するとしている。
民間調査会社の幹部は「粉飾疑惑は前々から耳にしていた」という。架空循環取引などによる売り上げと利益の水増しがなければ、インデックスは、遅くとも2011年8月期末に債務過程に陥っていた可能性が高いことが分かっている。
インデックスは95年設立で、NTTドコモの「iモード」向けのコンテンツなどで急成長した。しかし、タカラ(現タカラトミー)の株式取得など積極的なM&A(合併・買収)が裏目に出た。景気低迷にメインバンクの日本振興銀行の経営破綻が加わり、経営は悪化。11年8月期まで5期連続で赤字が続いていたが、12年同期は売り上げ183億円、最終利益4億4700万円を計上して黒字転換していた。
スポンサー企業を募り、事業譲渡を含めた経営再建案を策定するが、“受け皿企業”が出てくるとの見方は少ない。
●タカラ買収劇の舞台裏
05年5月、玩具業界第2位のタカラと3位のトミーが合併で合意。06年3月にタカラトミーが誕生した。この合併の仕掛け人が落合正美氏で、新会社にインデックスは22%出資して筆頭株主となった。総投資は137億円に上った。キャラクターの配信など、コンテンツビジネスの強化が狙いだった。
さらにインデックスは05年6月、フジテレビ、TBS、日本テレビ、テレビ朝日の在京キー局4社などを引受先とする205億円の第三者割当増資を実施した。テレビ局との“全方位外交”によって各テレビ局が保有する優良コンテンツを有料で配信し、収益を確保するという戦略だ。
●学研株式が行方不明になった件
インデックスの学研株流出問題が火を噴いたのは、08年4月19日だった。警視庁組織犯罪対策四課は、指定暴力団山口組一心会系組長、森泰智嘉容疑者ら4人を逮捕した。インデックス・ホールディングス(06年6月に純粋持ち株会社に移行していた)から現金を脅し取ろうとした恐喝未遂の容疑である。
インデックス・ホールディングスが保有していた東証一部上場の学習参考書出版大手・学習研究社(現在の学研ホールディングス)株式の流出をめぐり、インデックスHDの会長や役員らに計5回、「4億円の報酬で株の回収を依頼したことを認めろ」と恫喝していたという。
ところが、この事件は立件されなかった。逮捕から20日後の5月9日、東京地検は処分保留として釈放した。つまり、流出した学研株式のサルベージ(回収)をめぐって暴力団組長が恐喝したという事実(=容疑)は認められなかったということだ。
「投資会社に預けた学研株が、インデックスに無断で処分された」。こんな噂が兜町に流れたのは07年の夏ごろだった。インデックスは学研の株式を500万株保有し、持ち株比率は4.72%で第4位(07年3月期末時点)の大株主だった。このうちの250万株が大阪の投資会社に貸し出されたが、無断で売り払われてしまい、学研株が行方不明になっているというのが、噂の内容だった。
貸し株というのはライブドア全盛の時代に、しばしば聞かれた錬金術であり、保有している株式を第三者に貸すことをいう。貸し手は多額の貸し株手数料を手にする。一方、借り手は借りた株で空売りを仕掛け、株価を下げる。安くなったところで買い戻して、借りた株を返却する。空売りの儲けから貸し材料を差し引いたのが利ザヤになる。外資系証券会社や投資ファンドが得意とするマネーゲームの一つである。
学研株の流出問題は、当時、全盛だった会員制情報誌やアウトサイダー系の月刊経済誌で取り上げられ、金融・証券界で広く知られるようになっていた。
一連の噂についてインデックス側は当時、「学研の株式は、きちんと保有している」と否定した。だが、「インデックスが保有している当社株の全量(500万株)が行方不明になっている」と、学研側が07年の9月中間決算発表(11月16日)の席上で明らかにした。
その後、インデックスは監査法人の指示に従い、「学研株が戻らないことに備え、7億9500万円の貸倒引当金を積んだ」と説明した。学研は07年9月末時点で「インデックスの持ち株をゼロにして、大株主名簿から名前を消した」と発表していた。
業績が悪化して資金繰りが苦しくなったインデックスが、保有していた学研株500万株を担保にして、実体不明の会社から資金を借りた。この事件を当初から追いかけていた会員制情報誌はこう結論付けたが、真相はいまだに闇の中だ。
(文=編集部)