引越しの受注を休止したが、この機に撤退したほうがいい
ヤマトホームコンビニエンスは引越しの受注を当面休止するが、休止の期間、同社の社員は自宅待機でもするのだろうか。同社には5067名の社員がいる(18年4月現在、ヤマトHD資料による。以下同)。これだけの流通および配送の専門家は、もしヤマト運輸の宅配事業の応援に出れば、ヤマト運輸にとっては願ってもない援軍と歓迎されるだろう。何しろ、17年の残業代未払い事件を契機に同社は働き方の見直しに全社的に取り組んでいる。過去のように残業が管理されることなく膨らんでいくような状況ではない。
一方、宅配便の取り扱い個数が減ったかといえば、17年度の宅配便取扱個数が前年度と比べて1.7%減の18億3668万個になったにすぎない。減少は3年ぶりといっても、ほぼ横ばいだ。現場の繁忙さに大きな変わりはないことだろう。
ヤマト運輸の社員数は17万1898人である。そこにアルバイトや契約社員ではないヤマトホームコンビニエンスの精鋭が5067名加われば、3%近くの増員となる勘定だ。
しかし、ヤマトホームコンビニエンスの懲罰的謹慎期間が終わって、これらの社員がヤマト運輸の宅配便の現場から立ち去ってしまうと、大きな混乱が起こるのではないだろうか。
山内社長に対する私の提言は、ヤマトホームコンビニエンスが引き起こした不祥事をさらに反省して、この際、同社を廃業してしまうことだ。それでなんの不都合が起こるというのか。社会的にはヤマトグループの反省という印象を与え、グループとしてはコンプライアンスとガバナンスを強化する選択肢となる。
ヤマトホームコンビニエンスの廃業は、グループに対してどれほどの影響を与えるのか。
ヤマトホームコンビニエンスの18年3月期の「外部顧客に対する売り上げ」は489億円で、グループ全体の3.2%でしかない。また、その営業利益は5億円強でグループ全体の1.5%しかないのである。
事業セグメント間での利益の推移はどうなるだろう。ヤマトホームコンビニエンスの社員が宅配事業に移行した分だけ宅配事業の売上が上向くとすると、1兆2000億円(18年3月期の年間売上)に347億円ほどが足される勘定になる。19年3月期下半期の売上高営業利益率はグループで2.99%なので、347億円の売上増は年間で10億円強の営業利益を追加すると試算できる。