若年層や子育て世帯には恩恵大
8月21日に札幌市内で開かれた講演で、菅義偉官房長官が日本の大手携帯事業者には競争が働いていないと指摘し、携帯電話の料金は今より4割程度下げる余地があると述べた。実際、総務省の統計によれば、携帯通信料の価格は低下傾向にあるものの、移動電話通信料が家計支出に占める割合が拡大していることがわかる。
まず、移動通信端末は生活必需性が高まっているため、これが引き下げられれば低所得世帯により恩恵が及ぶ可能性がある。また一方で、移動通信端末は若年層の使用頻度が高いことが予想されるため、相対的に若年層の負担軽減効果が高い可能性がある。
実際、総務省の家計調査を用いて、2人以上の世帯主の年齢階層別と年収階層別に分け、2017年の消費支出に占める移動電話通信料の割合を算出した。結果は当然のことながら、世帯主の年齢階層が若いほど移動電話通信料の割合が高く、料金引き下げの恩恵を受けやすいということになる。また、年収階層別でみると、18歳未満人員割合の比較的高い年収450~1000万円で移動電話通信料金割合が平均を上回る。なお、地域別に比較すると、特に地域の違いによって大きな差は見受けられなかった。
従って、移動電話通信料金が引き下げられれば、全国まんべんなく若年層や子育て世帯への恩恵がより大きくなる可能性が高い。
しかし、移動通信通話料金引き下げだと、移動通信端末の利用率が低い高齢者層への恩恵が少ないという特徴もある。実際に、世帯主の年齢階層別の移動電話通信料金比率をみると、70代の利用率は20代の3分の1以下となり、おそらく年収階層別の年収300万円未満の利用率が低くなっているのも、労働市場から退出して年金収入を頼りに生活している高齢層世帯が含まれていることが影響しているものと推察される。
料金4割引き下げで国民1人当たり2万円以上の負担軽減だが……
一方、17年度の家計消費状況調査を用いた試算では、移動通信端末を使用していない人も含めると、1人当たり年平均5万2,371円を移動電話通信料に費やしていることになる。これは、仮に移動電話通信料金が4割安くなると国民1人当たり2万948円の負担軽減につながるため、家計全体では2.6兆円以上の負担軽減になることを示唆している。
また、17年平均の総務省家計調査を用いて世帯主の年齢階層別の負担軽減額を算出すると、世帯主の年齢が50代以下の世帯では6万円/年を上回るも、世帯主が60代以降になるとその額が5万円を大きく下回る。同様に、世帯主の年収階層別では、年収が650万円以上の世帯では6万円/年を上回るものの、年収200万円未満ではその額が2万円を下回ることになる。