増えているらしい。
(「アサヒグループホールディングスHP」より)
実は、ここでややこしい問題がある。青島ビールにはサントリーのライバル・アサヒビール(以下、アサヒ)が2009年から約20%出資していて、既に包括提携を結んでいたのだ。アサヒは「青島とサントリーの提携は上海地区の限定的な取り組みと、青島に確認済み」と説明。さらに、今年8月をメドに、スーパードライを青島の販売網を使い、中国全土で販売することを明らかにしたのだ。
本当にサントリー+青島の合弁は設立できるのか?
こういったことを考え合わせると、サントリーと青島の合弁販社が8月に設立できていない可能性が高い。その場合、上海・江蘇省においても現在の青島販売網を通してアサヒのスーパードライは販売される。ただし、サントリーと青島の合弁販社が年内までに設立された後は、アサヒは上海・江蘇省で青島ルートを使えなくなる可能性も出てくる。
上海と、隣接する江蘇省は、九州の約2.5倍の面積に相当し、約1億人が住んでいる。ここに青島の販社は3社あり、サントリーには同じく1社ある。合計4社が、両社の折半出資による合弁販社に統合されることになる。ちなみに工場は両社合わせて10カ所に点在し、やはり折半出資の事業会社を合弁で設け、統合させる。上海トップのサントリーと江蘇省トップの青島が一緒になるわけで、上海・江蘇省において3割を超えるトップシェアを握ることになる。
いずれにせよサントリーが過半を出資する販社で、アサヒ・スーパードライを売ることは、まず考えられない。現在、アサヒは上海地域で、スーパードライを独自に販売している。だが、上海を含めた中国で、同銘柄が日本市場のように売れているわけではない。94年にアサヒは中国に進出したが、現地で基幹ブランドのスーパードライが売れないのは最大の誤算だろう。
スーパードライは、中国では価格の高いプレミアムビールに相当する。しかし、外国のプレミアムで中国市場を横断して売れているのは「バドワイザー」(アンハイザー・ブッシュ・インベブ<ABインベブ>)や「ハイネケン」(ハイネケン)など欧米ブランドだけだ。そこでアサヒは、青島の販売網を活用して中国全土での展開を計画したわけだが、その矢先の提携発表となった。
日本2強の中国勝負は青島の気持ち次第?
ABインベブは青島株の27%を保有していたが、09年、アサヒは、その保有分から青島株の20%相当分を取得した。ABインベブは世界的なM&A(企業の合併買収)に明け暮れていたが、リーマンショックが発生し資金繰りが徐々に厳しくなってきていた。このため、青島株を放出せざるを得なくなった。その後、東京で会見した青島の金志国・董事長は、「アサヒは(長く付き合える)恋人。投資が目的だったABインベブとは違う」などと話していた。
アサヒの出資から、すなわちアサヒと青島が”恋人”同士になって3年が経過した。サントリーとの提携は、青島にとって初めての「浮気」なのか、それとも「本気」なのか。カギを握るのは、やはりアサヒ・スーパードライだ。中国でスーパードライが売れれば、青島の気持ちにも変化が出てくる可能性は十分にある。
(文=永井隆/経済ジャーナリスト)