外国人富裕層と労働者が混在する街
ニセコが外国人に注目され始めたのは、2000年以降のことだ。「9.11」米国同時多発テロを境に、北米のスキーリゾートを訪れていたオーストラリア人が、ニセコの良質なパウダースノーを求めて訪れるようになってからだ。その後、リゾート地の開発が進み、最近はオーストラリア人が所有していた別荘やコンドミニアムを、中国人やアジア系の富裕層が投資目的に高値で購入し、バブルが発生しているのである。
長期滞在する外国人は住民登録の必要があるため、倶知安町の外国人人口は年々増え続けている。平成30年1月の町の人口1万6492人のうち、外国人の登録者は1648人と全人口の1割(8月の登録者数は629人)。平成15年1月はわずか60人だったから15年間で27倍に膨張した。
一方、外国人宿泊者数は平成13年度の1012人が、平成28年度には11万6179人へと115倍に激増している。「外国人の街」とのイメージが強いのも当然だ。
滞在、宿泊の外国人が増え続けた結果、昭和40年代の1万9000人台をピークに減り続けてきた町の人口は、ここ10年は1万5000人台で横ばい。大幅な人口減を食い止めている。財政面も平成27年度予算で20億6600万円だった町税が、平成29年度は23億5500万円へと増加している。外国人の増加、外国資本の投下は町に恩恵をもたらしているわけだ。
しかし、過剰開発による環境への影響、増え続ける外国人居住者、観光客との共存など、課題も多い。ニセコひらふ地域の有志が昨年、「一般社団法人ニセコひらふエリアマネジメント」を設立し、外国資本との協業など新たな街づくりのための取り組みを進めており、担当者はこう説明する。
「活況を呈する街がより良く発展するよう、外国人と日本人がより一層共生できるよう、幅広い課題を扱っていく団体として活動をしてまいります。ゴミの分別処分の徹底、防犯灯の維持管理など日常の課題解決にあたる一方、観光や街づくりにおける提言、そして将来の新幹線延伸などに向けた街づくりの将来像の作成など、活動の幅を広げて行きたいと考えております」
一方、町は来年11月からは2%の宿泊税を導入し、渋滞対策や交通網の整備に充てるという。
外資や外国人居住者、観光客との共生・共存は可能なのか。北の高級リゾート地の変貌と進化を注視したい。
(文=山田稔/ジャーナリスト)