日本橋三越は富裕層の深掘りに特化
日本橋三越は10月24日、一部を新装オープンする。三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、3年間で150億円かけて同店の改装を進めている。
日本橋三越は富裕層向けの店づくりをより鮮明に打ち出した。客に付き添い、好みに合う商品を提案するコンシェルジュを90人配置し、客がインターネットで担当者を予約できるサービスを初めて導入する。
日本橋三越は第2期改装部分が19年度(20年3月期)中に完成する。20年度の売上高は改装前に比べて100億円の増加を見込む。
三越伊勢丹HDは店舗リストラの真っ只中にある。9月26日、伊勢丹相模原店(相模原市)、伊勢丹府中店(東京都府中市)、新潟三越(新潟市)の不採算店3店舗を閉鎖すると発表した。
今後は、富裕層などの需要が見込める都心の伊勢丹新宿本店(東京・新宿区)、日本橋三越(東京・中央区)、銀座三越(同)の基幹3店に経営資源を集中し収益力を高める。
都心3店のなかでも、濃淡がある。日本橋三越の18年3月期の売上高は17年3月期比5.9%減の1553億円と振るわない。19年3月期は18年同期比6.7%減の1448億円と、さらに落ち込む見込みだ。
日本橋三越の18年4~8月の累計売上高は、前年同期比8.0%減。減少率は期初予想の6.7%減を上回る。インバウンド需要の追い風を受けた伊勢丹新宿本店が、この期間8.6%増、三越銀座が9.7%増と堅調に推移しているのとは対照的だ。
日本橋という地域が集客力を失っているという、構造的な問題が内在する。
保守本流の百貨店として、日本橋で併走してきた日本橋高島屋と日本橋三越だが、髙島屋は都市型ショッビングセンターに活路を求め、三越は富裕層の深掘りに重点を置く。
2つの老舗百貨店の挑戦が、“お江戸日本橋”復興の起爆剤になるのだろうか。実際には、かなり厳しいといわざるを得ない。いったん、中心から外れた地域が、文化、商業、情報の発信の中心に返り咲いたことは、歴史上ないからである。
京都、奈良、鎌倉の古都は観光地となった。江戸時代から関東大震災まで、ずっと日本最大の繁華街だった浅草は、いまや都内最大の観光スポットとして賑わっている。
花のお江戸の起点であった日本橋も、いずれは老舗が軒を連ねる観光地となるのだろうか。
(文=編集部)