弁護士事務所との連携がカギ?
――探偵業界についてお尋ねします。警察庁の発表によると、各都道府県の公安委員会に届け出た探偵業は平成28年に5691事業者で、個人が8割を占めています。この比率は長年変わっていません。法人が少ない理由は、探偵業に事業化しにくい要素があるからなのでしょうか。
金澤 私は探偵業の仕組みは理美容業に似ていると思っています。理容室も美容室も大半は個人事業主で、法人化して多店舗展開している例は少ない業界です。理容師や美容師の仕事は立ち仕事で体を酷使するため、事業規模の拡大が難しいと聞いたことがありますが、探偵業も張り込み、尾行、聞き込みなど泥臭い仕事で、やはり体を使います。
しかも探偵業は、多くの法人や個人にとって遠い存在で、探偵事業者に調査を依頼しようという発想を持つ機会もほとんどないでしょう。したがって需要を見通せる仕事ではなく、極端に言えば「その日暮らし」の要素もあります。
――探偵業は経営計画を立てにくいのですね。
金澤 探偵業を事業化する手段はチケット制と顧問契約制の2つですが、なかなか難しいのが現実です。とくに顧問契約の場合、契約相手は法人ですが、弁護士や税理士と違って、経費削減の対象として契約が解消されやすいのです。現状で、事業規模を拡大している探偵事業者には、エステサロンを運営したり、M&AでIT企業を子会社化したりするなど異業種に多角化している例もあります。
――案件の獲得では、業務の内容からして営業が難しいのではないでしょうか。ホームページを開設しただけでは待ちの営業にとどまってしまいますが、児玉総合情報事務所では、どんなルートから案件を獲得していますか。
金澤 約100の弁護士事務所と連携して、弁護士事務所から案件を紹介していただくことが受注のメインで、同じ事務所から月に2~3件の依頼が入ることもあります。弁護士事務所とのパイプを強化しておくことが大切なので、他のルートや当社に直接入ってくる依頼のなかで、法律相談が必要な案件については弁護士事務所に紹介して、ギブアンドテイクの関係を築いています。
――他の探偵事業者も同じような方法で案件を獲得しているのですか。
金澤 弁護士事務所から紹介を受けている例は多いと思います。最近では、広告代理店など紹介業者を経由するパターンも増えています。紹介業者がネットで調査案件を受注して、登録している探偵事業者に発注するという仕組みで、調査料の10~20%が紹介手数料になっています。