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現役の探偵が、すべてぶっちゃけ!驚きの調査方法!料金は?気になる相談内容は?

取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト

――探偵事業者の数は、警察庁の発表では平成25年までなだらかに増え続けて、それ以降は横バイです。受注案件数や受注単価の推移はいかがですか。

金澤 探偵業界の市場規模の統計はありませんが、受注件数は横バイでしょう。受注単価については、東京都調査業協会が加盟事業者の調査料金を調査して、平成25年に平均値を発表しています。

 一般調査では、個人信用が10万円、職業適性が5万円、資産調査が7万円、企業信用が5万円、合縁診断が30万円、行方調査が50万円(1カ月)、所在調査が5万円。反社会的勢力などの特殊調査は別途料金が見積もられています。

 一方、尾行と張り込みを行なう行動調査は、基本調査が4時間以内2人で8万円、超過料金が1時間ごと2人で2万円、下見調査が1地区2カ所まで3万円。盗聴器探査は、基本料金が50平方メートルまで5万円、超過料金は10平方メートルごとに1万円が加算されています。

――職業適性というのは採用調査ですか。今でも行われているのですか。

金澤 厚生労働省は、本籍地や出生地などの身元調査、宗教や思想調査などへの配慮を求めていますが、法的に採用調査は禁じられていません。例えば高額な報酬で経営幹部をスカウトする場合、職務経歴書と面接だけの判断ではリスクが大きいので、厚労省の指針に反しない範囲で候補者を調査することは少なくありません。

最近の相談内容の傾向

――調査の依頼内容には傾向が見られるのでしょうか。

金澤 当社で増えている依頼内容は、セクハラ、パワハラ、横領、不倫、情報漏洩、詐欺など会社内の問題です。セクハラとパワハラは被害者から、横領、不倫、詐欺などは会社から主に依頼されますが、セクハラやパワハラを訴え出た社員の調査を会社から依頼されるケースもあります。

 ある会社で、セクハラを理由に退職した元社員がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に罹って再就職できずに困っているとして、会社に慰謝料を請求してきた事案がありました。会社は彼女の現況を把握するために調査を依頼してきたのですが、当社の調査員が尾行したところ、すでに彼女が他の会社で働いていたことが判明しました。当社が調査報告書を提出したのち、彼女は請求を取り下げてきました。

――尾行中に調査対象者に気づかれて、調査が中断してしまうことはないのですか。

金澤 当社では受注案件全体の0.5%ぐらいの確率にすぎませんが、尾行に気づかれて中断する場合もあります。

――その場合、どんな善後策を打つのでしょうか。

金澤 ご依頼者に正直に報告して、実費以外は請求しないとか、あるいは尾行をやり直すなどの措置を取っています。尾行をやり直す場合、対象者も数カ月経てば警戒心を持たなくなってくるので、半年ぐらい経ってから尾行に入ることもあります。

どうやって調査?

――ところで、調査活動に逆風が吹いていませんか。数年前ですが、私は今年2月に亡くなられた坪山晃三さん(元ミリオン資料サービス社長。金大中事件の発生前に都内で金大中を尾行した経歴を持つ)に、こう言われたことがあります。「インターネットの普及で誰もがそれなりに情報を入手できるようになった。さらに個人情報保護法の施行によって、聞き込みで個人情報を入手しにくくなり、探偵業の業務領域が狭まった」。金澤さんの実感はいかがですか。

金澤 そこは探偵会社の腕の見せどころです。当社の案件でこんな例があります。連携先の弁護士事務所が、逃走中の債務者に督促状を郵送するために、ある探偵会社に居場所の発見を依頼したことがあります。その探偵会社は、債務者が身を隠しているマンションを発見しましたが、部屋番号は特定できませんでした。

 弁護士事務所としては部屋番号が不明では督促状を郵送できません。そこで当社に依頼がきたのですが、部屋番号まで特定できないと回答したら、同業者と同じレベルにとどまってしまいます。当社は依頼を受けて、部屋番号を特定しました。

――部屋番号を特定するには、現地に行ってマンションの管理人から聞き出す以外にないと思います。どうやって聞き出したのですか。

金澤 こういうケースでは、管理人に調査目的を説明したうえで粘り強く交渉したり、雰囲気を和らげるために女性の調査員に担当させたりすることもあります。すると管理人によっては、郵便ボックスに書かれてある部屋番号を目配せして、それとなく教えてくれたことが実際にありました。探偵業に逆風が吹いているのなら、創意工夫を重ねて逆風を突破する取り組みが必要だと思います。

――もうひとつ、一部の探偵事業者が探偵業法を遵守していないことも探偵業のイメージを悪化させて、逆風を呼び起こしているのではないでしょうか。探偵業法第9条第1項に「調査の結果が犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いられることを知ったときは、当該探偵業務を行ってはならない」と書かれてありますね。

金澤 依頼目的が探偵業法に反していないかどうかは、面談時にご依頼者の話全体のなかでの矛盾点から感じ取ります。当社では、話の辻つまが合わない箇所は質疑応答とネット検索照合で分析します。ご依頼者の側に反社会的勢力の関与を感じた時には、相談時に席を外して、速やかに利害関係者の反社会的勢力属性のデータをチェックしています。

――探偵業法に反することがわかった場合、どんな断り方をするのですか。

金澤 断り方には、ふたつのパターンがあります。ひとつは「見積もりを出すのでしばらくお時間ください」と言って、その場の面談を終了させて、後日「検討した結果、ご期待に添えないので、今回はお断り致します」「調査の成功率が低く、費用対効果が望めないので、今回はお断りします」と回答するパターンです。

 もうひとつは、最初から違法性が明確な場合ですが、面談の席で「探偵業法での範囲外で、探偵業務に該当しないので、調査ができません」「ご依頼の調査は所属団体規定の縛りがあるので、お受けできません」と回答しています。

信頼できる探偵事業者の見分け方

――探偵業には警察署との関係も大切だと思いますが、付き合い方のコツはなんでしょうか。

金澤 防犯協会に加盟してボランティアなど協会活動に参加して、日頃から防犯に協力することです。さらに商工会や町会の活動にも参加して、地域からの信頼を得ることも大切だと思います。

――児玉総合情報事務所には、平成26年から元警察庁長官の山田英雄さんが特別顧問に就任されていますね。主にどんな役割を担ってもらっているのですか。

金澤 山田先生には定期的にお目にかかって、主に時事問題について講義を受けています。国内外の治安情勢、景気動向、あるいは日米関係や米中関係、中東情勢など国際政治情勢などについて、時局の見方を講義していただいています。

――金澤さんは探偵業に長年にわたって従事してこられました。何を信条になさっていますか。

金澤 私は平成元年に当社(当時の社名は日本探偵協会)に入社して、探偵業に従事してきました。今年で30年目になります。当社創業者の児玉道尚は「探偵学は人間生活生存学」という言葉を遺しました。人間の生活は情報との関りが深く、情報を提供する探偵業は人間の生活生存に資するものだという意味です。

 この言葉を胸に、やはり児玉が遺した「礼に始り礼に終ること」「言語・服装・態度をみださぬこと」「例外のあることを忘れるな」「変装は心までせよ」などの「日探十訓」を大切にしています。

――金澤さんは業界団体の活動にも従事されていますね。一般社団法人日本調査業協会の理事として、一般社団法人東京都調査業協会の理事として、何を担当しているのでしょうか。

金澤 2つの業界団体の理事として目指しているのは、探偵業の底上げと業界認知度アップです。2つの協会では、定期的に教育研修会も実施しています。協会会員および非会員も参加可能な研修会です。また協会会員は公益的な探偵業の活動も行い、業界発展の強い意志を持っているので、より底上げにつながると思います。

――最後に、信頼できる探偵事業者の見分け方を教えていただけますか。

金澤 まず料金体系が明確であること。それから相談者が「尾行や張り込みに気づかれた場合はどう対処するのですか?」というような探偵のプロがムッとしかねない質問をしてきた時、真摯に答えてくるかどうか。「私はプロですから、気づかれることはあり得ません」とか「プロですから、引き受けた調査に失敗することはありません」と答えてくるような人は疑問です。また、これは私の主観にすぎないのかもしれませんが、有名人と一緒に撮った写真を来訪者に見えるように飾ってある事務所はいかがなものか、と思います。

――確かに虚栄心が見えると、どんな職業でも実力や姿勢に疑問符が付きます。おもしろいお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
(取材・文=小野貴史/経済ジャーナリスト)

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