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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

利用者は成田空港の3倍…ドバイ空港「年9千万人利用」とエミレーツが世界シェア急拡大の理由

文=篠崎靖男/指揮者

ヘルシンキ空港成功の理由

 さて、これとは少し似ていますが、違うやり方での成功例もあります。それは僕の第2の音楽的故郷、フィンランドです。フィンランドには石油等の天然資源があるわけでも、スイスやフランスのような観光資源が豊かなわけでもありません。そこで彼らは、急成長しているアジアに目をつけ、小さな飛行場にすぎなかったヘルシンキ空港の地理的有利性を利用しようと考えました。アジアからヨーロッパの各都市に飛ぶと、必ずヘルシンキ上空を通ります。つまり、アジアからヨーロッパに入る最初に位置する空港なので、ここで乗り換えれば一番効率的なのです。

 そこで、小さな空港であったヘルシンキ空港を大きく増築し、同時にフィンランド航空自体も、思い切ってアジア便を増便しました。現在、北京、上海、ソウルはもちろん、日本発も、毎日、成田空港3便、中部空港1便、関西空港1便、福岡空港1便が就航しています。その結果、空港内は乗客でごった返すほどの大成功となりました。つい先日、僕が仕事でフィンランドを訪れた際には、再び空港の増築工事をしていました。

 ちなみに、指揮者が欧米のオーケストラから演奏会の依頼を受けてマネージャーが最初にすることは、フライトスケジュール確認です。せっかく依頼を受けても、フライトがなくてリハーサルに間に合わないことがわかり、泣く泣く断ることもよくあり、マネージャーは、まずはフライトがあるかどうかをしっかりと確認してから、具体的な出演料やプログラム、交通費、宿泊費等、諸々の交渉に入るのです。そのため、エミレーツ航空やフィンランド航空も含めて、フライトのチョイスが多いか否かは、僕たち音楽家にとっては死活問題なのです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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