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富士フイルム、ゼロックス買収計画破綻か…富士ゼロックスとゼロックス、競合・敵対関係も

文=編集部

ニューマネーを使わず買収するというスキームが反発を招く

 これまでの経緯を振り返ってみよう。

 富士フイルムHDは1月末にゼロックス買収を発表したが、ゼロックス大株主のカール・アイカーン氏が強く反発。同じく大株主のダーウィン・ディーソン氏は2月、買収差し止めを求めて訴訟を起こした。米裁判所は4月27日、ディーソン氏の主張を認めて差し止めの判決を下した。

 判決文はゼロックスの前CEOのジェフ・ジェイコブソン氏と富士フイルム担当者との親密さを示すメールのやり取りを引用しつつ、交渉の経緯を問題視。ジェイコブソン氏がCEOとしての立場を守るために買収を進めたと認定した。

 富士フイルムHDは判決を不服として5月に上訴。買収差し止めの判決を受けたため、買収を推進してきたジェイコブソン氏ら取締役6人が5月に退任。買収反対派のアイカーン氏のアドバイザーを務めていたビセンティン氏が新たにCEOに就いた。

 ビセンティン氏ら新経営陣は5月中旬、富士フイルムHDに合併合意の破棄を通告。富士フイルムHDは6月18日、契約を正当な理由なく終了することは契約違反だとして、ゼロックスを相手取り10億ドル(約1100億円)の損害賠償を求める訴えを米連邦地裁に起こした。

 ゼロックスは6月25日、富士フイルムHDの古森重隆会長に書簡を送り、2021年に期限を迎える提携契約を更新しない考えを表明。アジア太平洋地域で自社の製品を直接販売する考えを示した。

 富士フイルムHDは6月27日、古森氏からビセンティン氏宛の書簡を公表した。ゼロックスが2021年に失効する両社間の提携契約を更新せずにアジア・太平洋地域に進出するのであれば、現在ゼロックスが担当している欧米地域に富士ゼロックスが進出する考えを表明した。

 これにより富士フイルムHDとゼロックスは全面対決。ドロ試合の様相を帯びてきた。

 今回の米上級裁判所による買収手続きの差し止め命令の解除は、4月の差し止め命令とは正反対のものだが、現実的にはゼロックスの経営陣はすでに契約破棄を通告しており、差し止め命令の解除を受けても、さほど意味は持たない。

 古森氏は6月、年内にゼロックスの買収について最終判断をする可能性を示唆している。ゼロックスとの再交渉で落としどころを見いだせなければ、買収を断念して損害賠償を求める訴訟に的を絞ることになるとみられるが、最終判断の時期が2019年にズレ込むことは十分にあり得る。

 富士フイルムHDの買収案では、富士フイルムHDとゼロックスの合弁会社である富士ゼロックスが、富士フイルムが保有する75%の株式を買い入れる。富士フイルムHDはこれで得た資金を元手にゼロックスへ50.1%出資し、事実上、買収する。この、富士フイルムHDが新しい資金をまったく使わずに経営権を握る仕組みに、アイカーン氏らゼロックスの大株主たちが反発を強めた。「買収するなら自腹を切れ」と迫ったわけだ。

BusinessJournal編集部

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