圧倒的低価格実現の秘密
これらに人気があるのは、機能性だけが理由ではない。低価格であることも大きな理由となっている。1900円、2900円といった低価格の機能性ウェアも少なくない。同様のメーカー製品の3分の1から半分程度の安さで販売しているのだ。前述のバイカーズも高い機能性に加え、圧倒的な低価格が人気の理由となっている。同様の商品をバイク販売店などで買えば1万円を超えることも少なくないが、バイカーズは5800円という圧倒的な低価格で販売されている。
低価格を実現しているのは、10万着単位で大量生産し、生産コストを低減することができるためだ。それを全国800店超の店舗で販売できることが大きい。仮にワークマンプラスだけでしか販売できないとなると、これだけの大量生産は不可能だが、既存のワークマン店舗でも売れる商品群のため、大量販売が可能となっている。
女性からの人気が高いのも特徴的だ。既存のワークマン店舗の女性客の割合はわずか20%程度にすぎないが、ワークマンプラスららぽーと立川立飛店のオープン時の女性客の割合は45%にも上ったという。ワークマンは、女性作業員向けのおしゃれな作業服の開発も進めており、それで培ったノウハウを一般向けにも応用したことで、そのデザイン性の高さが評価されたかたちだ。ピンクなどのカラフルな色を使ったファッション性の高い機能性ウェアを低価格で取りそろえている。
ワークマンプラスは、女性客の取り込みに成功したことで、一般的に女性客が多いとされる大型商業施設への出店も可能になった。これは大きな収穫といえるだろう。今後は商業施設を中心に出店を進めていく方針だ。現在、3号店の出店が決まっており、埼玉県富士見市にある商業施設「ららぽーと富士見」内に11月22日、「ららぽーと富士見店」を出店する計画だ。また、既存のワークマン店舗にもワークマンプラスをインショップのかたちで展開することも検討しているという。
ワークマンは、低価格・高機能ウェアの潜在市場規模を4000億円と見積もっている。なかなかの規模となる市場ではあるが、目立った競合もおらず、同社としては積極出店により市場を独占したい考えだ。まずは数年で100店程度を展開し、200億円の売り上げを目指すとしている。
ワークマンプラスのみならず、本業のワークマン店舗も好調のため、業績は右肩上がりで伸びている。18年3月期の単独決算は、売上高が前期比7.7%増の560億円、純利益は同9.8%増の78億円だった。8期連続で増収増益を達成している。この8年で売上高は約7割増え、純利益は3倍に増えた。直近決算期末(9月末)の店舗数は826店にもなる。なお8割強がフランチャイズ店となっている。
同社は、近いうちに1000店体制を目指すとしている。まだまだ伸びしろがある既存のワークマン店舗に加え、ワークマンプラスも大きな役割を果たすことになりそうだ。今後の動向に注目したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。