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五輪特需期待高まるゼネコン業界、明暗を分けたものとは?正念場迎える竹中工務店

文=編集部
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五輪特需期待高まるゼネコン業界、明暗を分けたものとは?正念場迎える竹中工務店の画像1竹中工務店本社が所在する御堂ビル(「Wikipedia」より/Jo)

 7月3〜4日にスイス・ローザンヌで、2020年夏季五輪招致を目指す東京など3都市が、国際オリンピック委員会(IOC)の委員に対してプレゼンテーションを行った。終盤のヤマ場となるプレゼンで東京はリードを保てたのか? IOC委員は本音を明かさず、3都市横一線との見方も現地ではあった。

 東京五輪で注目されているのは、建設関連企業、東京湾岸の土地持ち企業、スポーツ用品関連銘柄などだ。国土交通省が6月末に発表した「5月の建設関連統計」によると、大手50社ベースの建設工事受注高は前年同月比で26.0%増加した。20%を上回る増加は1年4カ月ぶり。5月の住宅着工戸数も9カ月連続のプラス。これもアベノミクス効果というわけだ。

 9月7日に東京で決まるのか。イスタンブールは治安で、マドリードは財政で、大きなウイークポイントを抱えている。IOCの評価報告書を見る限り、東京開催の可能性は小さくない。

 東京五輪が決まれば、大手ゼネコン主体に膨大な建設需要の発生が見込まれている。14年3月期決算予想で、増収としているのは大林組。今年の高値から15%下の水準にある。対して、経常増益を見込んでいるのは鹿島建設だ。鹿島建設の株価は今年の高値から5%下のほぼ高値圏だが、唯一、増益見通しである点を買う向きがある。この2社が株価の面で飛び出すかもしれない。

 大林組の株価は東京都議選明けの6月24日に4%上昇し、約3週間ぶりに終値で500円台を回復し、その後も上昇基調だ。今年の高値は5月14日の645円だ。清水建設も週間で5%値上がりした。

 参院選で自公が圧勝したため、これを材料に株価が上放れるようだと、「昨年末の総選挙後にゼネコンの相場であったような大幅高が期待できる」と兜町ではいわれているが、果たしてどうか。上がるとしても、大成建設、清水建設、鹿島建設、大林組のスーパーゼネコン4社は、横並びで大きな差は出ないだろう。石原慎太郎・都知事の時代には「五輪利権」といえば、電通と鹿島建設といわれていたが、猪瀬直樹知事にはスーパーゼネコンをグリップして支配下に置くような“政治力”はないとみられている。

<スーパーゼネコンの株価>
会社名    今年の高値(円)   7/12の終値(円)
大成建設   419(7/16)     414(▲2)
大林組    645(5/14)     583(▲7)
清水建設   450(7/16)     445(+4)
鹿島建設   397(7/16)     391(+4)
▲はマイナス

「あべのハルカス」の開業で、竹中工務店は巻き返せるのか

 高さ300メートル、日本一の超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目1-43)が、6月13日に部分開業した。全面開業は14年春だ。

 プロジェクトの主体は近畿日本鉄道(近鉄)。設計・施工は竹中工務店。関西の2強といわれる大林組と竹中工務店は、業績でも明暗を分けた。大林組は、世界一高い電波塔「東京スカイツリー」を建設して評価を高めた。

 今度は竹中工務店の出番となるのか。大林組は、東京スカイツリーを巨大なショーウインドーとして利用した。施工現場を企業関係者らに見せ、地震対策など自社の高度な技術を上手にアピールした。東京スカイツリーで初めて一緒に仕事をした電気設備関連などの業者を新たに「大林組ファミリー」に加えることができたという、大きな“おまけ”までついた。

 近鉄最後の大型物件といわれる「あべのハルカス」で大林組に後れを取ったら、竹中工務店は永遠に立ち直れなくなる。「東京スカイツリーは、単独の工事の採算としては赤字だろう」(スーパーゼネコンの首脳)といわれているが、あそこまで上手にショーウインドーとして利用できれば、トータルとしては決して損にはならない。大林組は、東京スカイツリーで企業イメージを上げたし、首都圏での知名度も上がった。

 竹中工務店が受注した「あべのハルカス」も、「戦略上、竹中工務店は安値で受注したといわれている」(同)が、むしろ大林組が最終局面では竹中工務店と受注競争をしなかったのではないだろうか。「近鉄と最も近い関係にあるスーパーゼネコンは大林組なのだ」(関西の建設会社のトップ)から、大林組が無理をすれば「あべのハルカス」は獲れたといわれている。つまり大林組は、採算度外視で「あべのハルカス」を獲りには行かなかったということになる。

 スーパーゼネコンは、ランドマークになる大型施設の受注は単独で収支を考えたりしない。宣伝効果などを勘案して、最終“GO”サインを出すわけだ。総合判断(トップの戦略的判断かもしれない)で、大林組は「あべのハルカス」に“GO”サインを出さなかったということになる。

 スカイツリーは大成功した。大林組は損して大きく得を取ったわけだ。ライバルの竹中工務店は「あべのハルカス」で何を得るのか?

 東高西低–。関西経済の地盤沈下が激しい。「あべのハルカス」に入居する近鉄百貨店は、昨年11月に発表した全面開業後の初年度の売り上げ目標を、今年5月、1450億円に下方修正した。当初予想は1500億円。わずか50億円の下方修正と思われるかもしれないが、巨大商業施設が、開業前に目標を引き下げるのは異例中の異例だ。

 今、スーパーゼネコンは、東京五輪に並ぶ一大イベントを探している。東京スカイツリーは2年目に入っても絶好調だ。「あべのハルカス」の先行きは、どうなるのだろうか? いずれにせよ、“非上場のスーパーゼネコン”竹中工務店の正念場が続く。

大林組の目標株価引き上げ

 参院選で自民党の勝利→政権安定からゼネコン株に目標株価引き上げの動きが出てきた。JPモルガン証券は7月18日付で大林組の目標株価を700円(従来は450円)に引き上げた。700円という株価は07年の水準だ。7月19日の大林組の終値は567円(2円安)だから目標株価との差は133円。

 自民党の国土強靱化政策の推進で14年度も公共工事は増加する。9月7日に東京オリンピックの開催が決定すれば13年から20年まで関連建設工事が続く。さらに、14年にはリニア中央新幹線の工事が開始される。こうした動きを受け、建設セクターは本格的な需要拡大につながる、と兜町では読んでいる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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