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ファナック、中国での受注半減で露呈…中国経済、想定以上の悪化が進行

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 ファナックの受注を地域別に見ても、中国では前期比でほぼ半減、欧州でも7%程度減少と、事業環境の悪化が確認できる。この業績内容を目にした第一印象は、中国経済の減速は想定以上かもしれないということだ。米中の貿易戦争への懸念に加え、過剰生産能力の解消など中国経済には多くの下方リスクがある。中国政府が減税やインフラ投資による景気刺激を重視しているにもかかわらず中国本土株が軟調であることを見ると、想定以上に中国経済は悪化している可能性があるということだろう。
 

陰りが見え始めた中国向けのロボマシン事業

 ファナックは、FAとロボットにロボマシン部門を加えた3部門を収益の柱にしようとしてきた。ロボマシンとは、小型の切削加工機をいう。主な用途として、自動車のエンジンに使われるガスケットの切削、スマートフォンの外枠の切削がある。アップルのiPhoneをはじめスマートフォンの外枠はアルミを削り出してつくられている。この切削作業を行うのがロボマシンの一種であるロボドリルだ。

 17年度第4四半期までロボマシン部門の売り上げは、上下に振れつつも底堅く推移してきた。それを支えた要因は、スマートフォンだ。10年ごろからファナックはiPhoneの製造を手掛ける台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)などのEMS(電子機器の受託製造サービス)企業にロボドリルを納入してきた。その後、世界全体でスマートフォンが普及したことはいうまでもない。

 その結果、14年度から15年度にかけて、ロボマシン部門は全4事業部門中トップの売り上げを上げる“稼ぎ頭”に成長した。その環境のなかでファナックは自社工場での自動生産を進め、40%を超える売上高営業利益率を実現した。

 ただ、17年以降、世界のスマートフォンの出荷台数は伸び悩んでいる。短期間で、スマートフォン需要が盛り返す展開は想定しづらい。決算説明会でアップルがiPhoneなどの販売台数を公表しないことを表明したのも、その考えからだろう。

 17年以降のロボマシン需要は自動車部品の加工に支えられたが、スマートフォン関連の落ち込みをカバーするには至っていない。18年第2四半期、ロボマシン部門の売り上げは267億円と17年度第4四半期の約半分に落ち込んだ。

 今後の展開を考えると、電気自動車の開発がロボマシン需要を支える可能性はある。ただ、ガソリン自動車に比べ電気自動車の存在感はまだ小さい。加えて、今後は中国だけでなく米国でも景気が減速し、自動車の売り上げは減少する恐れがある。ファナックの収益環境は一段と悪化する可能性がある。

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