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フランスは自国経済のために「日産・ルノー経営統合」を強硬に推進する

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 日々、ゴーン氏の不正行為に関するさまざまな情報が出てくるなか、今後の展開は事実の解明とともに考えなければならない。報道では、有価証券報告書に記載されなかった報酬額は、ゴーン氏が退任後に受け取るよう処理されていた疑いも浮上している。今後の捜査と日産社内の調査の進捗とともに、日産がどのようにしてゴーン氏に報酬を支払うよう取り決めていたか(ゴーン氏と日産の契約内容の実態)、実際にどのような処理が行われていたか、誰がそれに関与していたかなどが明らかになるだろう。

経営統合を重視するフランス政府

 日産の経営には、フランス政府の利害が密接に絡んでいる。フランス政府は日産の親会社である仏ルノーの株式を15%保有する筆頭株主だ。近年、マクロン政権はルノー・日産・三菱自の3社のアライアンス体制(資本上の提携関係を維持しつつ、各社の独自性を保つ経営体制)ではなく、経営の統合を重視してきた。

 ゴーン氏が逮捕された後も、フランス政府の基本的な考えに変化はない。25日、ルメール経済・財務相が、アライアンスのトップにはフランス人が就くべきとの考えを示した。また、同氏はゴーン氏の有罪が明らかになるまでは、「推定無罪の原則(証拠に基づいて有罪であることが確定するまでは、罪を犯していないと推定されるという考え)」が働くとの立場も明確にした。その考えに基づき、ゴーン氏はルノーの会長職に留まっている。現状をまとめれば、ゴーン氏が逮捕されはしたが、その問題が3社のアライアンスの運営に影響を与えることはないというのがフランス政府の立場だ。

 その背景には、マクロン政権の経済政策が影響している。同政権が経済対策で成果を上げるためには、国内の雇用を増加できればよい。そのために、自動車企業の役割は重要だ。なぜなら、自動車産業は豊富な労働力を必要とする組立型産業の代名詞といえるからである。足許、マクロン大統領の支持率は低下している。点数稼ぎの意味でも、3社の経営統合が実現する意義は大きい。マクロン政権が易々と経営統合を諦めるとは考えづらい。

 その上、フランス政府は国内自動車産業の競争力も引き上げたい。足許では自動運転技術やEV(電気自動車)の開発など、世界の自動車業界は100年に一度ともいわれる大きな変化に直面している。経営統合は、ルノーが経営規模を拡大するだけでなく、より効率的に新しいテクノロジー開発を進めることを可能にするだろう。

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