不透明感高まるアライアンス体制
今後、3社のアライアンス体制がどのように運営されていくかは読みづらい。捜査などを受けて、さらなる問題が明らかになる可能性も否定はできない。先行きが読みづらいなか、当面は、日産自動車がどのようにして関係者の納得を獲得し、ゴーン氏の後任を選ぶかに注目が集まるだろう。
特に、全会一致でゴーン氏の会長解任などが決議されたことは重要だ。記者会見での西川(さいかわ)廣人社長の発言を基に考えると、日産の社内にはトップ一人に大きな権限が集まることへの危機感が蓄積されてきた。全会一致で解任が決議できたということは、日産経営陣の危機感に対してルノーおよびフランス政府がそれなりの理解を示したということだ。日産はこの状況をうまく利用し、ルノーの納得を取り付けてゴーン氏の後任を取締役の中から選定する必要がある。それができれば、アライアンスを維持しつつ社内の動揺を鎮静化し、成長に向けた戦略を策定・執行することができるだろう。
反対に、日産がルノーおよびフランス政府の納得を得られない場合、両社の関係がこじれる恐れがある。そうなると、日産の組織全体において士気が低下する恐れがある。そのなかで、日産がコーポレート・ガバナンス(企業統治)の改革を進めたり、成長に向けた新しい取り組みを進めることは難しくなるだろう。
現状、日仏両国政府は日産の経営問題に関して過度の干渉を控えることを確認したと報じられており、フランス政府の意向を反映したルノーが、日産の株を買い増すことは容易ではないだろう。リーガルリスクを抱える企業の株を買い増すことに関しては、ルノーの株主からも批判が強まる可能性がある。全会一致でゴーン氏の解任が決議されたことを受けて、どのようにして日産経営陣が経営体制の立て直しを進めることができるか、それにフランス政府がどう反応するかが当面の焦点とみる。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)