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下請けの染色会社・小松マテーレは、いかにしてアパレルブランド&高成長企業に脱皮?

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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さらなるイノベーション発揮への期待

 
 小松マテーレの経営には、「自社の事業領域はここまで」という発想がないように感じる。自社の技術が応用できると考えるのであれば、新しい取り組みを進めるのが同社の良いところだ。同社は衣料用繊維の技術を応用して炭素繊維の生産を行い、建材関連の分野にも進出している。同社の炭素繊維複合材である「カボコーマ」は耐震補強材などとしての利用が期待されている。

 このように考えると、小松マテーレは従来の繊維にはない機能を生み出し、その用途、具体的な商品コンセプトを自ら発信することで、需要を取り込もうとしている。これは同社が、連続的にイノベーションの発揮を目指していることにほかならない。

 同社がこの考え方を強化し、加速させていくことができれば持続的な成長を実現できるだろう。株式市場においても、そうした見方は多いようだ。リーマンショック後、小松マテーレの株価の上昇率は、TOPIX(東証株価指数)や同社の筆頭株主である東レを上回っている。それは、投資家が小松マテーレの新しい取り組みを評価している証拠といえる。環境の変化に対応していくためにも、同社は連続的に新しい取り組みを進め、従来にはなかった製品(最終製品や企業向けの原材料)を生み出していかなければならない。

 今後は、小松マテーレのアパレル・ブランド事業の動向に注目したい。消費者が衣類にどのような機能、デザイン、着ることによって得られるイメージや満足感を求めているかを把握するためには、一人でも多くの消費者が同社ブランドの衣服を実際に使う必要がある。それによって同社は合成繊維に対する消費者のニーズを把握し、さらなる技術開発につなげることができる。そうした取り組みが収益獲得には欠かせないだろう。国内アパレル市場が右肩下がりの状況にあるなか、同社がどのように消費者の支持を獲得できるか、実に興味深い。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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