ワタミ隠しで業績に底を打つ
このように、ワタミは鶏肉料理を提供する店舗を積極的に展開している。これら店舗の鶏肉料理をよく見てみると、面白いことに、鶏肉の各部位をまんべんなく使用していることがわかる。焼き鳥店が部位をまんべんなく使うのは当たり前として、それ以外の店舗のメニューを見てみると、モモ肉、ムネ肉、ササミ(深胸筋)、手羽といった幅広い部位を使用していることがわかるだろう。このように部位を幅広く使用することで、仕入れ面で優位性を築き、原価低減を図っている。同社はこれを戦略的に行っているのだ。
から揚げの天才とビービーキュー、ワンズガーデンは店舗数がまだまだ少ないが、今後拡大していくことで、より安定的な仕入れが可能になるだろう。なお、ワタミで焼き鳥を提供しているのは三代目鳥メロだけではない。9月末時点で44店を展開する居酒屋「炭旬」は主に焼き鳥と海鮮料理を提供しているし、同96店の和民でも焼き鳥や各種鶏肉料理を扱っている。これらを含め、鶏肉の仕入れ面で規模の経済を実現したい考えだ。
和民などを三代目鳥メロなどへ転換し、それに並行して鶏業態を新たに拡大していったことは、「ワタミ隠し」の進展にもつながっている。
ワタミの名を冠する和民は、業態転換や不採算店の閉鎖により100店を切るまでに減った。今後も減らしていく方針だ。こうしてワタミの名がつく店舗が少なくなってきており、ワタミ隠しが着実に進行している。なお、4~9月期の同業態の既存店売上高は宴会客数の計画未達で前年同期比2.1%減となってしまったが、以前と比べれば減少幅は縮小している。
同じくワタミの名を冠するわたみん家は転換と閉鎖を進めたことで、4~9月期の間に廃止となった。わたみん家は、焼き鳥など焼き物料理を低価格で提供することを売りにした居酒屋で、本来であれば勢いがあっていいはずだが、ワタミの名が足を引っ張り、廃止に追い込まれた。なんとも皮肉な話だ。
鶏業態・鶏肉料理の拡大とワタミ隠しで業績が底を打ちつつあるワタミ。これらにより真の復活を果たせるのかに注目したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。