自由に使える所得、全世代平均は月2万4千円…単身者は同居人ありより1万円も多い
次に、自由裁量所得をどのような用途に使用しているのか。アンケート対象者に23項目から該当するものをすべて選んでもらい、「1カ月あたりの平均支出金額」と「1週間あたりの平均消費時間」について各々数値を自由記入式で聞いたところ、全体では「ショッピング」「お菓子・お茶・コーヒーなどの嗜好品」「外食・グルメ」の3項目が順に高い回答率に。なかでも「外食・グルメ」は単身居住者の支出が特に多い傾向が表れた。
「これは単身者が食を日常の楽しみにしている傾向もあると思われますが、自炊の機会が相対的に少ないための結果であるとも考えられます。そのほか、居住形態で金額差が大きい項目は、単身居住者では『貯蓄』。このことから将来の備えに対する意識が単身者のほうが高い傾向がうかがえます。同居居住者で高かった項目は『車・バイク・自転車』と『投資・株などの資産運用』でしたが、原データを見たところ『投資・株などの資産運用』は極端に高額な回答をした人の影響が大きかったようです。『車・バイク・自転車』に関しては、やはり家族がいると自動車の利用率が高くなることの表れではないかと考えられます」(同)
単身居住者は、個人で楽しめる娯楽に時間とお金を費やしがち
続いて、同居人の有無にかかわらず、男性が3世代以上で平均支出金額が全体の合計平均よりも多かった項目は「ショッピング」「ゲーム」「お酒」「人づきあい・交際」で、消費時間が長い項目は「有料動画配信サービス」「本・雑誌・漫画など」「お酒」の3つだった。一方、女性で平均支出金額が多かったのは「美容」で、平均消費時間が多いのは「旅行・レジャー」と「美容」の2項目という結果に。
「このことから男性は趣味・嗜好に多く支出をしていますが、時間はそれほどかけていない傾向があり、はまったものに集中的にお金をかけているようです。反対に、女性はひとつのことに集中して支出するのではなく、複数の項目に分散して支出する傾向があるようです」(同)
さらに、単身居住者は「スポーツ・フィットネス」「ゲーム」「パソコン・家電製品」「お酒」「人づきあい・交際」「投資・株などの資産運用」の6項目により多くの時間を費やしていることがわかった。
「これらの項目は、単身者のほうが同居人がいる回答者よりも支出額も多いという結果になりました。ここまでのアンケート結果を総合すると、自由にできるお金が比較的多い単身者が、個人で楽しめる娯楽を中心に時間とお金を費やす傾向にあるといえるでしょう。しかし、全世代平均の自由裁量所得は約2万4000円と決して高いとはいえません。若い人を中心に定着した価値観に『コスパ』がありますが、当人にとってしっかり価値に見合うものでないと、企業は支出してもらえない時代になっているのかもしれませんね」(同)
単身居住者をターゲットにした商品展開は、今後も重視される可能性は高い。しかし、かけられる金額はそれほど高くないことを考えると、これまで以上に質の高い商品やサービスが企業に求められるということなのだろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季)