貯蓄額「中央値」は380万円…「就職のために大学進学」は不要に、学びたい人は無償で
前回に引き続き、未来の「教育費」について、考えてみましょう。
簡単に前回の要約をしますと、今後の日本は人口減少、超長寿化、低経済成長(ないしはゼロ成長)が同時にやってくるという、経験したことのない時代に突入します。そうなれば「家計」は当然に変化を迫られ、その「未来予想図〜家計版」を考えていこう、というのがこのコラムの主旨です。そこで「教育費」をテーマに取り上げました。
現状の教育費は家計に対する負担が大きくなる傾向があり、少子化にも大きな影響を及ぼしています。政府は労働力不足を補うために女性の社会進出を推奨していますが、同時に少子化に歯止めをかけるべく、働きながら子育てしやすい政策に動き始めています。
顕著なものが教育費の無償化です。今後、幼児教育の無償化や低所得層を中心とした高等教育無償化の実施が予定されています。この傾向は家計にとってありがたいものではあるものの、親の所得水準に関係なく、すべての子供たちに広く公平な教育の機会が与えられたほうがいいとする個人的な見解もお話しさせていただきました。
さて、その続きとして今回は、もう少し広い視野から家計における「教育費」負担について考えてみたいと思います。その大前提として押さえておきたいのは、「なぜ家計は教育費にお金をかけたがるのか」です。
家計は困窮し始めている
あるアンケート調査によると、大学生が大学の進学理由に挙げたトップが「就職のため」でした(前回コラムで紹介)。これは家計相談の現場からも強く感じますし、「親に言われて大学に進学した」という学生もいました。そのためでしょうか。授業終わりに学生からくる質問というと、「自分の単位(取得)は大丈夫か?」「(授業の)欠席は何回まで大丈夫か?」といったものが非常に多いのです。たまに授業の内容について質問がくると、心からうれしくなったりします。
学生は何かを学びに大学へきているというよりも「単位のため」、ひいては「就職のため」の通過点として大学を認識しているように思えます。あくまで私の少ないサンプルでしかありませんが、他の大学の先生方とお話ししても同様の話を聞きますので、私ひとりの感覚ではないようです。もちろん、なかには優秀な学生もいますので、全員とはいいません。が、少数派な印象です。