格安でユニーを手に入れたドンキHD
ここに至るまでの経緯を振り返っておく。
ユニーは10月9日、愛知県稲沢市から名古屋駅の複合高層ビル「グローバルゲート」に本社を移転してお披露目を行ったばかりだった。四半世紀ぶりの本社移転は、ユニー・ファミマHDの連携強化を図るためのものだった。ユニーにとって「日経ビジネスオンライン」のスクープ記事が出るのは晴天の霹靂だった。ユニーは組合への説明も、15日の正式発表から逆算して週末(12、13日)に行うことにしていたからだ。そこで11日の記者会見で「ユニーの社員の雇用条件は変わらない。組合は存続する」とドンキHDの大原社長に、あえて発言してもらうことになった。組合対策である。
ユニー・ファミマHDの高柳社長は「コンビニ一本足打法」と言われることを嫌っていた。「20%出資したのは、コンビニ、GMS、ディスカウントストアの3本立ての経営にするため」と力説したが、ユニーの社員には動揺が広がった。
確かに、ユニーの若手社員は「MEGAドン・キホーテUNY」に転換して店舗に研修に行き、ドンキ流のやり方を理解、共感していた。しかし、中堅以上は「先行きはどうなるのか」と、不安に思っていた。「5年間でユニーの100店舗をドンキのような店舗にする」(ドンキHDの大原社長)。ということは、新たに100人の店長が必要になるということだ。ユニーで眠っている人材を生かすことができるかどうかが成功のカギを握る。
実は、ユニー・ファミマHDの高柳社長は、GMSを切り離したがっていた。18年8月、ユニー・ファミマHDへの出資比率を50.1%に高めて子会社にした伊藤忠商事の岡藤正広会長兼CEO(最高経営責任者)の意向に沿うかたちで、ユニーをドンキHDに売り払った。
この交渉の過程で、ドンキHDのしたたかさばかりが目立ったといわれている。
今回の資本提携でもっとも恩恵を受けるのは、282億円という破格の値段でユニーを手に入れるドンキHDだ。18年2月末のユニーの純資産の60%相当分は540億円。差額(258億円)の一部を「負ののれん代」として、19年2月期に利益に計上することになる。全額計上すれば、利益は急増する。
ドンキHDとユニーの売上高を単純合算すると、1兆6543億円。これはイオンの8兆3900億円、セブン&アイ・ホールディングスの6兆378億円、ファーストリテイリングの2兆1300億円に次ぐ国内4位の小売業者になる。安売りという“すき間”からスタートしたドンキHDは、メジャーに昇格した。今後2~3年でユニクロのファーストリテイリングに追いつき、追い抜い抜くことが視野に入ってきた。
株式市場ではユニーとの相乗効果を見込んだ買いが先行。ドンキHDの株価は11月26日、一時、7800円の上場来高値を更新した。