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高橋篤史「経済禁忌録」

日本と香港を股にかける“アンダーグラウンドの人脈と金脈”

文=高橋篤史/ジャーナリスト

 こうしたことから、今回問題となっている増資は一連の相場操縦の準備行為として実行された疑いが極めて強い。劉元社長はできるだけ多くの株を高値で売り抜けようとしたわけだ。それが露見するのを防ぐため、ダミーの割当先を用意したと考えるのが妥当だろう。

 実際、リシェン社名義のストリーム株は14年12月上旬から順次、市場で売却されている(新株予約権はその前の9月18日にすべて行使された)。それは事件の家宅捜索が入る16年10月上旬まで続き、割当数のほぼ3分の1にあたる239万株が売却された。株価は吊り上げたピーク時より下がっていたとはいえ、割当価額に比べればかなり高い水準にあったので、多額のサヤを抜いたはずである。

 当の劉元社長は事件捜査が進むなか、辞任前後に中国へと帰国してしまったとみられる。調査委員会はさらに調査を継続するとしているが、これまで劉元社長の協力は得られていない。そんななか、証券取引等監視委員会は虚偽記載を認定、ストリームに対し課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した。一定の計算式によりはじき出された課徴金は1391万円に上る。

 今回、外部から指摘されたという虚偽記載の疑いは昨年10月15日に開かれた笹尾被告の初公判でも一端が明らかにされていた。元証券マンの笹尾被告は13年前に架空増資などが問われた日本エルエスアイカード事件でも有罪判決を受けているその道の有名人。11年暮れの仮釈放後、家族を富山県に残し平日は都内のマンションを根城に株関連の仕事をする生活を続けていた。そんななか、前述の故上田氏に声を掛けられ相場操縦に参加したようだ。罪状認否で笹尾被告は起訴事実を概ね認めた。問題のリシェン社名義株については、その日の終盤、検察側による証拠書類の要旨告知のなかで触れられていた。

 ストリーム事件はアンダーグラウンドの人脈や金脈が絡み合う複雑な事件であり、そうした魑魅魍魎の関係性がどれだけ明らかにされるかが公判の見所のひとつだ。もっとも、全部で3人の被告のうち公判が開かれたのは、これまでのところ笹尾被告だけで、それもまだ1回のみ。起訴から1年以上経つというのに、キーマンと目される佐戸被告は非公開の公判前整理手続きがようやく終わり2月に初公判を迎える。高橋被告も初公判はまだである。

高橋篤史/ジャーナリスト

高橋篤史/ジャーナリスト

1968年生まれ。日刊工業新聞社、東洋経済新報社を経て2009年からフリーランスのジャーナリスト。著書に、新潮ドキュメント賞候補となった『凋落 木村剛と大島健伸』(東洋経済新報社)や『創価学会秘史』(講談社)などがある。

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