九電は昨年10月13日の土曜日、「調整力の限界を超える」と判断。太陽光発電事業者に対し、発電を一時停止させる出力制御に踏み切った。
その後は、好天で供給が増えるのに需要が低下する土日や年始の3日を含めて計9回、出力制御を行った。太陽光と風力の事業者約2万3000件から輪番で実施している。
九電の池辺和弘社長は1月7日の年頭あいさつ後の記者団の取材に「出力制限の回数は増えていくと思う」と語っている。
原発は九電が4基を動かしているほかは、関西電力が高浜原発、大飯原発など4基、四国電力の伊方原発の1基にとどまる。再稼働する原発が増えれば各電力会社で出力制限が広がることになる。
電力が不足して停電するだけではない。余りすぎても停電するのだ。太陽光など再生エネを、国が言う「主力電源」にするには、蓄電技術の開発しかない。しかし、過剰供給となる電気をためる蓄電池の開発には、莫大なコストがかかる。そのため、出力制限で太陽光発電業者に泣いてもらうしかない。これが電力会社のホンネだ。
太陽光発電業者に退散を迫る
原発の再稼働をにらみ、太陽光発電業者に退散を促す包囲網が絞られてきた。
経済産業省は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で、19年度の太陽光発電(事業用)を1キロワット時あたり14円とし、現在の18円から22%引き下げる。
買い取り枠を設けた上で安い電力を提示する事業者から順番に買い入れる入札の対象を500キロワット以上とし、従来の2000キロワット以上から広げる。事業者の退場を促すことにもなる。
18年度には上限価格の15.5円を非公開にして2000キロワット以上のメガソーラから入札を募ったところ、入札価格がいずれも上限を上回り、成立しなかった。
今回は上限価格を14円とし、入札制の対象も出力500キロワット以上に広げる。14円という価格は大規模な事業者でも採算が厳しい水準で、小規模な発電を計画する事業者に淘汰を迫るものとなる。
当初、FITで買い取り価格を高く設定したのは、東日本大震災後の電力不足を補い、太陽光発電の普及を促すためだった。その狙い通り、建設会社や投資会社、外国企業などさまざまなプレーヤーが参入した。その結果、電力が余りすぎ、太陽光発電が重荷になった。
かくして“太陽光バブル”は終わることになった。
(文=編集部)