成長戦略の切り札でも閉店続出
販売不振で店舗の閉鎖も続いている。1月末時点の店舗数は14店。1年前から7店減った。3分の1が消えたことになる。閉店ラッシュが止まらない。最近では昨年末に3店閉鎖し、19年1月には2店閉鎖している。わずか2カ月で5店が消え去った。
最近の店舗閉鎖で注目したいのが、昨年末に新宿と有明のアウトレット店を閉鎖したことと、19年1月にソファ専門店「ライフスタイルショップ柏の葉T-SITE」を閉鎖したことだろう。この3店の閉鎖に関しては、通常の大塚家具店舗の閉鎖とは意味合いが大きく異なる。なぜなら、不振から脱却を図るための切り札として開業した店舗だったからだ。
大塚家具は、中古品市場が拡大していることもあり、16年から中古家具の買い取りや下取り、販売を本格的に始めた。東京や横浜、大阪などにアウトレット店を次々と開業していった。しかし、販売は振るわず、店舗の閉鎖が続いている。現在アウトレット店は大阪にある1店のみとなっており、中古家具販売事業は大幅な縮小を余儀なくされている。
閉店したソファ専門店も、成長戦略における切り札だった。大塚家具は拡大している単品買い需要を取り込むため、分野を絞った専門店を開発していった。ソファ専門店のほか、眠りの専門店や照明専門店を生み出している。「ポルトローナ・フラウ」もブランド特化型の専門店として開発されたものだ。これらは専門性が発揮できるとともに店舗を小型化することで都心部でも容易に出店できるように設計されている。
現社長の大塚久美子氏は、父親と経営権を争う「お家騒動」を経て15年1月に復帰のかたちで社長に就いた。以降、お家騒動によるイメージ悪化の影響などで急激に悪化した業績を回復させるため、アウトレット店や専門店を展開するなど、さまざまな対策を講じてきた。しかし、これまでに示してきたように、施策の一部が失敗に終わるなどで目立った成果は出せていない。また、施策が軌道に乗るメドもたっておらず、暗雲が立ち込めている。
ハイラインズや昨年業務提携を発表した中国で「イージーホーム」のブランド名で家具を販売する「居然之家」との提携では、中国市場の開拓が期待できる。だが、これは日本市場での成長に直接的につながるものではない。また、ヤマダ電機との提携は、得られる効果が限定的だろう。いずれも抜本的な解決策にはならないのではないか。
やはり、日本での復活が期待されている。久美子社長もそれを望んでいるはずだ。日本において傷ついたブランドイメージをいかにして回復させるのか、そして、いかにして成長を実現するのかが改めて問われているといえそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。