しかし、そのように対策を取って注意喚起をしたところで、粗相をする人は必ずいます。ですから、ある程度は民泊を運営していくうえでのリスクだと認識し、例えば清掃費用も想定しておくなど、そのリスク込みの値段設定をしておくことが大事でしょう」(高橋氏)
トラブルをゼロにすることに躍起になるよりも、不可避なリスクだと容認し、事後処理にあたるほうが賢いということか。そんなリスクが付きまとう民泊経営だが、ビジネスの視点から見るとどのような利点があるのだろう。
「まず、メリットといえるかどうかは個人個人の感じ方によって違うでしょうが、ビジネスとしては簡単な部類に入ります。清掃を含めた管理をすべて代行業者に委託することも可能ですから、ある程度、利用者の目途が立つようであれば収入源として期待できるからです。
もちろん、時間に余裕のある方ならば、自身で管理をすることでランニングコストを最低限に抑えることができますし、自分の持ち家で運営する人は賃料がかからないので、収支の計算がとても簡単です。
有償での空港からの送迎や食事の提供など、提供できるサービスには法律で制限されているものもあるので要注意です。けれど、部屋と一緒にオプションでバイクなどの移動手段を貸し出し、観光面でのサポートをするなど、オプションを工夫するなどして多様なビジネス展開をすることも可能です」(同)
民泊新法施行後も、いまだブラックな部分が大きい民泊業界
ここで民泊新法が施行された理由について、改めて整理したい。
「民泊新法は、増加する旅行客の受け入れの必要性と、違法民泊によるトラブルの予防の観点から施行されました。民泊経営への受け皿を大きくするとともに、違法なところはしっかりと取り締まっていくというスタンスで、正式に行政に届出をした方だけが民泊を経営できるようにし、健全な宿泊所を増やしていくことが目的です。
最近、違法民泊でのマンション管理組合や貸主との契約トラブルの相談は減ってきています。これまでは賃貸住宅で勝手に民泊事業を始め、規約違反で追い出されたり、旅館業法違反で摘発されたりということが起こっていましたが、民泊新法のおかげで今後はこのようなトラブルは少なくなっていくと予想しています。しかし、違法民泊はまだ多く残っていることも事実です。徐々に摘発されていますが、完全になくすのは難しいでしょう」(同)