コンビニチェーンを成立させるバランス
これまで、数多くのコンビニFC訴訟というものが存在しました。たいていの場合、ロイヤリティが払えなくなったFC側が、「立地が悪い」「売上予想の説明がなかった」などといった言い訳から始まる訴訟なのですが、裁判所というところは、構図的に大企業側を冷遇し、社会的弱者と見えるほうに“肩入れ”してしまうところなので、数多くの訴訟において、契約上の規定が曲解され、ときには無視され、FC店側に有利な判決を繰り返してきました。
しかし、このようなことが横行するならFC制度は崩壊しかねませんし、契約という取引の安全を図ることができなくなります。
また、前述のようにコンビニにおいては「24時間営業」にこそ存在意義があるのであれば、これを維持することがブランド価値を維持することも意味するわけですから、「(24時間営業が)できないなら、営業するな」というロジックも、ある意味、まっとうな意見と思料します。
ただし、FC店を経営する者の、コンビニ以外のビジネスを選択するという選択の自由を奪うような「長期の契約期間」が設定されていたり、「FC店側からの契約解除」が一方的に制限されているような場合には、このような契約条項は無効とされる可能性が高くなりますので、ここらへんでバランスをとるべきです。
結局のところ、今回の件はFC店側が本部とろくに話し合いもせずに、19時間営業としてしまったことにも問題があるのではないでしょうか。コンビニは、その店舗だけの都合ではなく、商品(特に生鮮食品)の製造のタイミングや、配送のタイミングなど、さまざまなバランスで成り立っています。ある地域の配送計画が綿密に立てられているのに、午前1時~6時の間、一店舗だけ閉じていたら、この配送計画も狂ってしまうことでしょう。
また、コンビニはその売れ筋などを詳細なマス・データとして商品開発などを行っているわけですから、店舗ごとの都合をいちいち聞いていたら、ここらへんにも支障を来してしまうでしょう。
このような背景事情を考えずに、「24時間営業を止めた途端に解除を通告された」点だけをとらえ、「本部は血も涙もない」などと騒ぎ立てるのがそもそもの間違いです。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。弁護士法人ALG&Associates執行役員として法律事務所を経営し、また同法人に寄せられる離婚相談、相続問題、刑事問題を取り扱う民事・刑事事業部長として後輩の指導・育成も行っている。芸能などのニュースに関して、TVやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。弁護士としては、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験を様々な方面で活かしている。