F1ならぬFEが熱い!街のど真ん中を突っ走るモーターレース、日産チームに密着!
またユニークな試みとして「ファンブースト」が行われている。これはレースの6日前からレース開始後15分までの間にフォーミュラEのサイトから自分が応援するドライバー/マシンに投票することで、得票の高い上位5名のドライバーがレース後半に約5秒間のエキストラパワーを一度だけ得られるという仕組みだ。直線区間で前車を追い抜きたい場合などに効果が得られレース展開を面白くすると見込まれている。
内燃機関のレースとはすべて異なり新鮮
このようにさまざまな工夫が凝らされレースを盛り上げようとしているのが、今季のFEシリーズなのだ。そして、そのエントラント(参加者)もメーカー系を中心に専門的なプロフェッショナルチームで構成されている。今回取材した日産チームは、欧州のレースチームとして実績のある「ダムス」が電動部門eダムスとして創設したチームとジョイント。ドライバーにはF1でも活躍したセバスチャン・ブエミ(スイス)とオリバー・ローランド(英)という豪華な布陣で臨んでいる。
日産のモータースポーツ部門会社であるニスモが車体後部に集約されるモーターやパワーマネージメントコントロールユニット、トランスミッションなどを設計し供給している。ただトランスミッションは変速装置ではなくリダクション(減速)ギアのみで走行中に変速することはない。ドライバーはステアリングに設置されたパドルを操作するが、これは変速のためではなくモーター回生の強度を変化させ減速度をアジャストするのだという。
アクセルとブレーキの2ペダルはF1と同じだが、パドルで減速・回生をコントロールするのは慣れが必要だろう。またFEではコースでの事前テストができないため、各チーム、シミュレーター(SIM)を開発し所有。SIM専門の開発ドライバーもいてレースでのセッティングやバッテリーマネージメントをデータ化しているのだそうだ。
レースの戦い方、レースへのアプローチなど内燃機関のレースとはすべて異なり新鮮だ。
香港でのレースは日産チームのO・ローランド選手が序盤トップを快走したが、スイッチの誤操作で順位を落とし、終盤はマシントラブルでS・ブエミ選手共々リタイヤしてしまった。しかしレース全体は非常にエキサイティングであり楽しめた。
現在もシトロエン、アウディ、ジャガー、ルノーといったメーカー系チームが多数参戦しているが、今後はポルシェやメルセデス・ベンツなどの参戦も予定されているという。F1と同様にFEもレース界の頂点として人々の羨望を集めることができるようになるか。今後のFEの行方に注目していただきたいと思っている。
(文=中谷明彦/レーシングドライバー、自動車評論家)