(1)については、訂正報道の申し入れの権限は、放送によって侵害を受けた「本人もしくは直接の関係者」というものであり、「考える会」はさっそく当事者である野党議員から提出してもらう準備に入った。一方、(2)については、一番の核心点である偽装写真問題をなぜ報道しないのかという点に答えておらず、ある意味でNHKの立ち位置がよくわかる回答だった。そこで、今回はNHKへの苦情処理書提出時の様子と、NHKからの回答を報告し、森友問題とNHK報道の問題について考えたい。
市民団体の入館を警備員が遮る
3月22日 、 NHKニュースセンター西正門で、NHKへの抗議集会「NHKは安倍チャンネルをやめて公平なニュースを」(「NHKとメディアの『今』を考える会」主催)が行われた(写真1参照)。集会終了後、「考える会」の市民約10名は、前出NHK報道『森友学園問題 立民・共産の議員の発言に工事業者反論』に対する苦情処理書の提出に向かった。ところが、「考える会」の市民がNHKの西門から入ろうとすると、写真2のとおり警備員が行く手をふさぎ、押し問答となった。「放送法に基づく苦情処理書を提出するために来た。建物に入れ、担当者に会わせてもらいたい」「提出に来ることをあらかじめ視聴者センターに連絡を取っている」と市民が話しても、警備員の人数はどんどん増え、敷地内に一歩も入れなかった。
参加市民の一人が広報局視聴者部に電話して事情を話したところ、そこでもNHKに抗議に来るのなら入れないと言う。「集会はすでに終わり、苦情処理書を持ってきただけ」と話すと、郵送で送ってくれと言う。「目の前に持って来ているのだから受け取ってもらいたい」と言うと、抗議集会への参加者は入構させないと言う。その携帯電話でのやり取りを聞いていた市民から一斉に驚きの声が上がった。
改めて「抗議集会への参加は憲法で認められている活動であり、それに参加しているからといって入構すら認めないというのはおかしい」と言うと、1時間後の13時に苦情処理書を受け取ることが約束された。「考える会」が13時に行くと、視聴者部の担当者が苦情処理書を受け取った。受領のサインをもらった上で、考える会は苦情処理書の要点を以下のように説明した。
・NHKは、森友問題の解決に尽力した野党を逆に批判・中傷した
・工事業者が認めた写真偽装問題が最大の要点であるのに、なんら報じていない
・工事業者の野党への反論は、回答書には文言として書かれてはいるが、事実ではなく、NHKが事実調査せず見出しにして報道していた
・写真偽装問題は、その後すでに国が認め、国有地売却において8億円値引きした根拠を失うという重大な局面を迎えていること報道するよう要求
これに対し、NHKの担当者は回答することを約束したが、公共放送を担うNHKが「抗議集会に参加していた」ことをもって入館すら阻止するという憲法遵守を欠落した意識には驚く。