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鈴木その子・没後18年、今もSONOKOの化粧品が売れ続ける理由…昭和型経営の勝利

文=出口知史/企業経営者、SONOKO代表取締役社長
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 育ってほしいと期待する社員への指導はとても厳しかったそうです。ゴミ箱のチェックは欠かさず、そこから無駄遣いの形跡を発見したら、小さいことでもきちんと注意をしていたそうです。仕事の上での厳しい態度も、普段のちょっとした優しさなどを通じて感じられる信頼関係があり、期待の裏返しであることを相互にわかったうえでのことだったので、それによって何か問題が起こることもありませんでした。

 そして、鈴木自身が社員の誰よりもハードワークをこなしていたそうです。自分自身のどこかで死期を感じていたのかもしれませんが、亡くなる直前になってもまったくペースを緩めることもなかったそうです。その背中を見ていた社員は、自然と背筋を正していったとのことです。

 そうして残された社員は、鈴木が亡くなった後でも、「勉強させてもらった」「良い経験をさせてもらった」などと深い思い出や感謝の念が残っているので、尊敬とはまた一段違った畏敬の念を鈴木に抱いています。その想いはお客様にも伝えられ、脈々とエネルギーは引き継がれています。

 もちろん、時間とともにそうした感情は少しずつ薄れてはいきますが、鈴木の考えた理論の骨子は、かつてミリオンセラーにもなった書籍『やせたい人は食べなさい』(祥伝社)ほか多数残っています。それを読めば記憶が蘇ってきますし、何かの拍子に出会い鈴木の考え方に共感する人もいらっしゃいます。摂食障害を扱っている病院が多くないという背景もあり、藁にもすがる思いで鈴木の書籍を読んで実践する人もいらっしゃいます。

 鈴木がどこまで事前に考えていたのか、今では本人に確認しようもありませんが、企業戦略として見たときには、カリスマ的な個性だけでなく、人の心に深く刺さる人材マネジメントに加えて、自社の得意分野や競争環境を踏まえた事業ポジションを取っていたことが、奇跡の永続性を生み出したと言えます。日本経済も少しずつ変化していき、起業も盛んになり、経営者はたくさん生まれ続けていますが、参考のひとつとなれれば幸いです。

(文=出口知史/企業経営者)

●出口知史(でぐち・さとし)

ぬいぐるみの進化版でもあり、小学生に大人気のスクイーズのトップブランドであるiBloom(アイブルーム)を販売する、株式会社Nicori社長。東京大学大学院工学系研究科修了後、コーポレイトディレクション、ダイヤモンド社を経て、産業再生機構など3社の投資ファンドにおいて、投資先企業の経営者として複数の会社を連続で再生・成長へと導く。前・SONOKO代表取締役社長。著書に『困った人の説得術』(日本経済新聞出版社)、『論理思考の「壁』を破る』(ファーストプレス)、『東大生が実際に学んでいる戦略思考の授業』(徳間書店)などがある。

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