全国各地でガソリンスタンドの倒産が相次いでいる。東京商工リサーチの調査によると、2018年の倒産件数は5年ぶりに増加に転じた。また、休廃業・解散も増加しており、厳しい経営環境を映し出している。
背景にあるのは、エコカーの普及や高齢化に伴う運転者の減少、地方経済の低迷などだ。ガソリン需要が落ち込むことで、特に地方のガソリンスタンドの経営環境は悪化の一途をたどるほか、「ガソリンスタンド過疎地」問題にも波及している。
東京商工リサーチ情報本部経済研究室の関雅史課長は、「ガソリンスタンドの減少は地方の衰退を加速させる。さらに、消費者の利便性低下だけでなく、災害時などに深刻な事態を招くことにもつながる」と警鐘を鳴らす。ガソリンスタンドの倒産状況について、関氏に話を聞いた。
ピーク時から半減したガソリンスタンド
――ガソリンスタンドの倒産状況について教えてください。
関雅史氏(以下、関) 18年のガソリンスタンドの倒産は35件(前年比25.0%増、前年28件)で5年ぶりに前年を上回りました。負債総額は63億8100万円(同53.2%増、同41億6400万円)と、前年の1.5倍に膨らんでいます。負債10億円以上の大型倒産は1件(前年ゼロ)でしたが、同1億円以上5億円未満が16件(前年比100.0%増、前年8件)と倍増したことが影響しました。原因別では「販売不振」が24件(前年比26.3%増、前年19件)と全体の68.5%を占めています。
倒産を地区別に見ると、全国9地区のうち北陸を除く8地区で発生しました。最多は近畿の8件(前年2件)。次いで、関東7件(同4件)、中部7件(同5件)、東北5件(同3件)、九州4件(同7件)、中国2件(同2件)、北海道1件(同1件)、四国1件(同3件)となっています。都道府県別では22都道府県で発生し、大阪の5件(同1件)が最多でした。
また、休廃業・解散も増えていて、18年は198件(前年比36.5%増、前年145件)になりました。これは14年からの最近5年では最多で、業界の先行きの不透明さが事業承継を難しくしていることをうかがわせています。
ガソリンスタンドは生活インフラの一部であり、災害時には重要な役割を果たすことが、昨年9月の北海道胆振東部地震でも再認識されました。特に、地方では公共交通機関の乏しさを自家用車でカバーしているのが実態で、ガソリンスタンドが近所から消えていくと日常生活に悪影響を及ぼします。安倍政権は重要な政策課題に「地方創生」を掲げていますが、その前提としてガソリンスタンドの存続が必要不可欠なのです。
――そういえば、地方をドライブしていてガソリンスタンドがなくて困ったことがありました。
関 資源エネルギー庁によると、全国のガソリンスタンド(給油所)数は17年度末で3万747カ所でした。ピークの1994年度末(6万421カ所)から23年連続で減少し、ほぼ半減しています。
生活圏内のガソリンスタンドが減ると、自家用車や農林業用車両への給油だけでなく、寒冷地では生活必需品の灯油供給などの、移動手段を持たない高齢者への対応が後手に回り、地方を中心に生活基盤が脅かされる状況が生まれます。
さらに、最近は「ガソリンスタンド過疎地」問題が全国的な課題としてクローズアップされています。同庁は市町村内のガソリンスタンド数が3カ所以下の自治体を「ガソリンスタンド過疎地」(正式には「サービスステーション過疎地」)としており、2017年度末の時点で全国312市町村にのぼります。また、ガソリンスタンドが1カ所のみの自治体は75町村、ひとつもない自治体が12町村あります。