弁護士を含む調査委員会で調査し、その後に社内外の監査役が事実関係を再調査して確認し、「当社の対応には問題はない」とする見解を発表した。
ネット上には「転勤する可能性のある人は給料が良いのだから転勤を拒むのは間違い」といった意見もある。とはいえ、企業の姿勢が厳しく問われているときに「対応に問題はなかった」と冷たく突き放すだけでは、解決にならない。
対応のまずさで株価は下落
カネカの対応のまずさを指摘する声は多い。
退職を報告するツイートの翌日には、カネカのHPから自社の育休制度を紹介するページが削除されていることが発覚した。それまで、育休制度説明は介護休業など共に、ワークライフバランスのページがあり、制度の概要や取得人員が記載されていたが、それが消えていたのだ。
カネカは3日に「6月2日のシステム障害について」と題するリリースを公表。なぜ騒動が起きているのかの本題には触れず、「アクセスの集中により一時的に繋がらない状態が発生した」と釈明。また、ワークライフバランスのページについては、「削除しておりません」「2月にHPをリニューアルし、内容を再編いたしました」と否定。だが、そのリニューアルの際に一部が残っていたとし、今はそれを消しているのだと説明している。
この対応は完全なミスだった。どう考えても、都合が悪くなったので、育休制度についての記述を一旦削除したが、炎上したため「システム障害」という苦しい言い訳をしたと受け止められてしまった。
カネカは2009年度、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業に付与される「くるみんマーク」を取得した。
働き方改革では、「フレックス勤務制度」や「裁量労働制度」「在宅勤務制度」等を導入し、社員に柔軟で自律的な働き方を提供している、というのが公式見解だ。これが、いわば、カネカの建て前である。
ところが、育休制度を利用した社員の妻からパタハラを告発されたことで、「『育休をどんどん取ってください』ときれいごとを述べているが、実態はブラック企業と変わりない」などと糾弾されることになった。
騒動の影響を受け、カネカの株価は6月3日、3615円の年初来安値をつけた。年初来高値の4535円(4月17日)から2割下落。時価総額で624億円消えた計算だ。
SNS対応のまずさが招いた代償は決して小さくなかった。
(文=編集部)