スプレーは1本1万円から2万円(施工料込み)で販売、原価は1000円程度といわれており、利幅は大きい。新しく入居するお客に、敷金、礼金、仲介料の話をしたあと、オプションでカギの交換と部屋の消臭を勧めるのが、普通のセールストークとされる。特に女性の入居者は、消臭のオプションを希望することが多いといわれている。
「玄関や台所などに『除菌済み』の貼紙をして、やったことにしてしまうケースがある」(中規模以下の賃貸業者)
APAMANショップが爆発事故を起こして、消臭サービスを実施していないことがバレてしまった。「他社はどうなのか」(ユーザー)と業界全体に不信感を植えつけたことは見逃せない事実だ。
19年3月中間決算から付帯・関連サービスのメニューから簡易消火剤、防菌消臭剤が消えたが、いずれにせよ消臭サービスの不正は高い代償を負った。
19年9月期(通期)に通期管理戸数10万戸、付帯商品粗利22億円の目標を掲げていたが、爆発事故の後遺症で目標達成は困難となり、この目標を取り下げた。
株価は、爆発事故前の18年12月14日の終値が888円だったが、事故後に大きく下げ、同年12月28日の大納会には703円まで下げた。19年の年初来安値は588円(1月18日)。3月に株価が反転し、905円(3月20日)と事故前の株価水準まで一時、回復した。これが年初来高値だ。6月14日の終値は788円(18円高)。
爆発から半年、賠償は難航
爆発事故の影響で、傾斜した向かいのビルの存続をめぐり、ビル所有者がテナントに立ち退きを迫っている。
APAMAN側は修復を前提にビル所有者と賠償の交渉を進めており、営業を再開したテナントは困惑している。
6月15日付読売新聞によると、問題のビルは事故があった「アパマンショップ平岸駅前店」跡地の向かいの雑居ビルと同ビルに隣接したマンションの2棟。不動産仲介業者が所有し、居酒屋、美容室など計8店舗が入居している。
不動産仲介業者は4月中旬、各テナントに対して「建物各所に傾斜が確認され、危険な状態」として2棟の取り壊しを前提に、賃貸借契約を解除する通知を送付した。
一方、「平岸駅前店」の運営会社、アパマンショップリーシング北海道は5月末、各テナントに対して「ビルを取り壊さずに修復を可能にする工法がある」と説明。修復を前提に、ビル・マンションを所有する不動産仲介業者に損害賠償金を支払う意向を示している。
両者の見解は大きく隔たっており、この問題の解決までには、かなりの時間が必要なようである。
(文=編集部)