「生娘をシャブ漬け戦略」
「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」
牛丼チェーン「吉野家」の伊東正明常務(49)が、早稲田大学主催の社会人向け講座『デジタル時代の総合マーケティング講座』で講師を務めた際、若い女性をターゲットにした“牛丼マーケティングのコツ”についてそう語ったのだという。前述の発言は16日に開かれた同講座に出席した女性らが、FacebookやTwitter上で「性差別」「人権侵害を助長している」と指摘して発覚。伊東氏への批判が殺到し、主催元の早大が謝罪する騒動に発展した。
一方、吉野家が同社公式サイトに掲示した謝罪文については、“作成者”が伊東氏本人だったのではないか、との疑問がSNS上で指摘され、話題になっている。どういうことなのか。
吉野家「人権・ジェンダー問題の観点から許容できない」
共同通信は18日、記事『吉野家常務が不適切発言 若い女性を「薬物漬け」』を配信。同記事は以下のように報じている。
<牛丼チェーン「吉野家」は18日、伊東正明常務(49)が早稲田大主催の社会人向け講座で、若者を狙ったマーケティング戦略に関して「生娘がシャブ(薬物)漬けになるような企画」と発言していたと明らかにした。吉野家は「極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではない」と謝罪し、伊東氏の処分を検討している>
同記事中で触れられている“吉野家の謝罪”とは、同社が公式サイト上で発表したプレスリリース『当社役員の不適切発言についてのお詫び』のことを指している。そこには以下のように記されていた。
「株式会社吉野家常務取締役企画本部長が、4 月 16 日に開催された外部における社会人向け講座にて講師として登壇した際に、不適切な発言をしたことで、講座受講者と主催者の皆様、吉野家をご愛用いただいているお客様に対して多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことに対し、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした。
当該役員が講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切であり、人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません。当人も、発言内容および皆様にご迷惑とご不快な思いをさせたことに深く反省し、主催者側へは講座開催翌日に書面にて反省の意と謝罪をお伝えし、改めて対面にて謝罪予定です」
“お詫び”作成者名に“Ito Masaaki”、吉野家「本人作成でない」
前述の謝罪文の“主語”は企業としての吉野家であり、吉野家が同社役員の不祥事を謝罪しているようにみえる。しかし、この“お詫び”のPDFファイルのドキュメントプロパティの作成者名に“Ito Masaaki”とあったため、Twitter上で「本人がお詫び文を書いたのか?」との指摘が続出したようだ。当該PDFファイルは18日11時29分22秒に作成。同日15時23分49秒に更新され、19日午前10時現在、作成者は空欄となっている。
伊東氏は、同社のプレスリリースなどを統括する広報・PR担当部署「企画本部」の本部長でもある。当該PDFファイルの作者名について、同企画本部の広報担当者は次のように説明した。
「文書を作成したのは、伊東ではありません。部署としての企画本部の広報です。部署で作成される文書の作成者名が、責任者の伊東になる仕様だったため誤解を招いてしまいました」
伊東氏は元P&Gバイスプレジデントとして、ジョイやアリエールなどの国内市場でのブランド再生を手がけ、コンシューマーマーケティングのスペシャリストとして業界でその名前が広く知られる。昨年7月14日、アクセンチュアインタラクティブ本部の顧問にも就任したほか、個人でマーケティング講座も開催していた。
消費者のニーズをつかみ、商品価値やメーカーの価値を高めることに定評のあった伊東氏だが、今回の軽率な発言で失われた吉野家と早大のブランド価値は計り知れない。
(文=Business Journal編集部)