マキタで資本業務提携を主導したのは、6月に会長になった後藤昌彦氏。後藤会長はマキタを世界の電動工具メーカーに育てた中興の祖、故・後藤十次郎元社長の孫に当たる。実質的にはオーナー経営であるため、シャープへの100億円の投資を決断できた。
LIXILは50億円出資した。100億円の出資で合意寸前までいったが、公募増資をなかなか決断できないシャープの経営陣にLIXILの藤森義明社長は不満を募らせ、一時期は「シャープの支援にはまったく興味ない」と語るほどだった。シャープが、ようやく公募増資に踏み切ったことからLIXILも50億円の出資に応じた。
LIXILとシャープは建材とエレキを融合させた製品などを企画しており、共同出資会社、エコ・ライフ・ソリューションを11年8月に設立している。12年4月に初の共同開発商品の屋根一体型の太陽光発電システム「ソーラールーフ」を発売した。13年4月には、住宅のエネルギーが見えるホームエネルギーマネジメントシステム「みるる」を発売している。
デンソーは大口の出資に難色を示し、結局25億円にとどめた。デンソーはシャープの車載用のカメラやディスプレーのほか、表示計など安全にかかわる技術に関心がある。シャープのレーザー技術を応用した衝突回避支援システムでの協業を検討しているという。もし、シャープの車載事業への取り組みが十分でなければ、いつでも購入したシャープ株式を売却する考えだといわれている。
調達額が300億円以上不足したシャープは、今後どうするのか。
再増資の可能性はあるが、実施すれば1株当たりの利益がさらに薄まり、株価は今回の公募増資と第三者割当増資の発行価格1株279円を割り込む危険を孕んでいる。そうなれば、今回の増資に協力してくれた3社側に、保有するシャープ株式の評価損が出る事態に陥るため、次の増資もままならない状態なのだ。
待ったなしの財務再建に迫られながらも身動きが取れないシャープ、本格的な経営再建に向けては、しばらくは視界不明瞭な状況が続きそうだ。
(文=編集部)