SNS業界の1年を振り返る~好調米国企業に市場を制圧される日本、参入機会も縮小
2013年は、日米でソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)業界における明暗がはっきりした1年だった。
米国においては、まずFacebookが1年間に及んだ株価低迷を抜け、ついにIPO(株式公開)の設定価格を超えた。ティーンエイジャー層のユーザー数が減少傾向にあるのではないかという不安を抱えつつも、モバイル広告が絶好調であったことが好材料となった。
さらにTwitterがIPOを果たし、しかも株価も上々であったことから、世界で最も有名なSNSの双璧であるといえるFacebookとTwitterが、大変良い1年を締めくくれそうなムードである。
さらにポストFacebook、ポストTwitterと呼べそうな新興企業が米国には目白押しだ。まず筆頭として挙げるべきは、女性を中心に人気の写真共有サイト、Pinterestだ。売り上げがほとんどないにもかかわらず、すでに38億ドルという凄まじい企業価値に達している。日本円にして実に3800億円というのは、いささかバブルという気がしないでもない。しかしそれに続くモバイルアプリSnapchatは、10秒以内に消える画像を送れるというユニークさが受けてFacebookから30億ドルでの買収のオファーを受けるなど、市場全体がそうした評価をよしとするムードにあふれているのが米国の事情だ。
しかもSnapchatの若きCEO(23歳)のエヴァン・スピーゲルは、この申し出をあっさりと却下したのだから凄まじい。これだけのオファーを蹴るからには、スピーゲル1人の決断ではなく、取締役会のメンバーたちの総意が必要なはずである。つまり、ベスト&ブライテストが集まっているはずのSnapchatの投資家たちが、30億ドルでは足りない、まだまだ株価は上がる、と判断したということだ。
Pinterest、Snapchat以外にも、スマホにもともと入っているSMS(ショートメッセージ)などを使わずにメッセージのやり取りができるWhatsAppや、課金系TwitterといえるPheedなど、これからの急成長を期待されるソーシャル系スタートアップはまだまだ多い。そして彼らのほとんどが、ワンビリオンダラークラブ入り(企業価値10億ドルを超えることに成功すると、こう呼ばれるようになる)を虎視眈々と狙っているのである。
●新規事業が出てこない日本
これに対して日本はどうかというと、これまでのSNS業界を牽引してきたGREE、DeNA、mixiの業績が悪化し、特にGREEとmixiは人員整理にまで手を付けるほどに追い込まれている(mixiは、リストラの事実はないと否定しているが)。
ブラウザーベースのソーシャルゲームは市場の急激な縮小状態にあり、GREEとDeNAはスマートフォン上でのネイティブアプリでの収益拡大と、追い込まれたとはいえまだまだ強力な財務基盤を活かして、他分野への投資を通じて事業の多角化を急ぐ。
mixiは新ゲームが好調で株価を戻しているものの、長期的かつ継続的な収益源になるかどうかはまだ不明だ。3社とも、先述のように財務的には劣勢を跳ね返す力を残しているだけに、今後の戦術がどう功を奏すか、様子を見なければまだどうなるかはわからない。
ただ、いずれの企業も、ユーザーを実名にせよ匿名にせよつなぎ合わせていくことで、ソーシャルグラフやインスタレストグラフを巨大化することを狙うという戦略を取ってはいない。これが米国の事情と大きく異なるところだ。いや、日本発のSNS企業としてはLINEがあるが、メッセージングサービスをベースにしていることと、スタートアップではないため、例外的な存在であると考えるべきだろう。逆にいえば社内ベンチャーの数少ない成功例として、日本の大企業も学ぶ必要がある。
TwitterがIPOしたことで、日本のソーシャルメディアマーケティング市場には好影響があり、ホットリンク、アライドアーキテクツなどのスタートアップ(というよりすでにベテランの領域にいるベンチャー)がIPOを果たしたが、彼らはソーシャルメディアそのものでもソーシャルネットワークでもない。彼らはソーシャルネットワークが発生させるトラフィックを源泉とする、二次的なサービスをもって成立する。逆にいうと、彼らが依って立つべきソーシャルトラフィックの持ち主は、いまや完全に米国企業のみとなっている。