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階級社会化するネット〜膨大な弱者が少数の勝者に搾取されるネットの現実

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中川淳一郎氏
 『ウェブはバカと暇人のもの』『ウェブを炎上させるイタい人たち』『ウェブで儲ける人と損する人の法則』など、ウェブ編集者の視点でネット社会を痛烈に風刺した本を次々に世に送り出してきた中川淳一郎氏。中川氏の最新作『ネットのバカ』(新潮新書)が7月に上梓され、話題となっている。

 著者である中川氏に、『ウェブはバカと暇人のもの』を発行した4年前から現在までに変わったネットの現状について語ってもらった。

── 新著『ネットのバカ』は、2009年に刊行された『ウェブはバカと暇人のもの』の続編、という色合いが強い本ですね。

中川淳一郎氏(以下、中川) はい。日本におけるインターネットを俯瞰する、という点で通底しています。『ウェブはバカと~』の後も、ネット炎上を軸にした『ウェブを炎上させるイタい人たち』や、ネットのビジネス利用、マネタイズを中心に語った『ウェブで儲ける人と損する人の法則』など、特定のテーマにフォーカスしたネット関連本を書きましたが、総覧的に記したものは『ネットのバカ』が4年ぶりの本になる、ということです。

── 俯瞰する本を4年ぶりに執筆された理由は?

中川 端的には、本を1冊書けるだけのネタが揃った、ということ。毎日毎日、それこそ365日ずっとネットニュースを編集し続けている“IT小作農”であるオレは、どんなニュースがネットでバズった(編註:話題になった)か、どんなバカが出てきたか、日々記録しています。そうして地道にネタを蓄積して、ネット文脈のようなものを読み解いて、ようやく1冊書けるくらいの手応えを得られたので、そろそろ書いてみようかなと腰を上げることができた。もちろん、新潮社の担当編集者が熱心に口説いてくださり、いろいろな視点や構成プランを提案してくれたことも大きいですが。

── 4年かけて、ネタを蓄えたわけですね。

中川 ええ。オレは、評論家でも文化人でも小説家でもなく、一ネットニュース編集者です。実務者として本を書かせてもらう以上、実務を通じて得た新しい知見や新しいトピックをしっかりと蓄えてから、新しい本を世に出すのが筋だと思うので。だいたい、過去ネタの焼き直しや手クセで雑感をまとめたような本を書くなんて、不誠実この上ないですよ。特にビジネス系では、そういう著者も多いみたいですけどね。

 正直、いろいろな出版社からオファーはいただいていたんです。「『ウェブはバカと~』の続編を書きませんか?」「現時点でのネットを総括するような本を出しませんか?」と。ただ、「ごめんなさい。書けません」と、ずっとお断りしてきた。オレとしては、『ウェブはバカと~』でネットの現実はすべて語ってしまった感覚があって。翻って言うなら、この4年間は『ウェブはバカと~』で語ったネットの身もふたもなさが、より強固になっていく、さらにひどくなっていく過程だったと言ってもいい。結局、ネットではバカや暇人がますます跳梁跋扈するようになった。

── ということは、ネットの本質みたいなものは何も変わらず、個別の事例などはむしろ“こじらせ感”が増した、ということでしょうか?

中川 そうです。環境的には大きな変化があって、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアが普及して、多くのネットユーザーがより自由につながり、自由に発言できるようになりました。ただ、それにしてもバカがさらに大声になって大量発生する結果を招いたし、匿名アカウントで論客や芸能人に一方的に絡んではつまらない揚げ足取りをしたり、ピント外れの批判やヘイトスピーチを喧伝したり、といったことが横行するようになったのも事実ですから。

── いわゆるウェブ2.0で高らかにうたわれたユートピア的なネット空間が否定されていく過程だったわけですか?

中川 おっしゃる通りです。09年からの変化ということではもうひとつ、インターネットのユートピア論者たち……ウェブ2.0文脈のエヴァンジェリストたちの発言力が相対的に弱くなったことも見逃せません。

 ブログやソーシャルメディアがもたらす自由で平等な言論空間、これまで知り合えなかったような人々とのフラットなつながり、多くの人々が知見を分かち合う集合知などなど、ウェブ2.0では技術決定論的に、夢のようなインターネット社会の未来が語られたわけですが、そんな世界は夢物語だった。

 結局は、バカと暇人が、さらにのさばるようになっただけ。そして、芸能人やテレビ文化人といったリアルで発言力のある人、パーソナルブランディングで小賢しく自分を“盛り”ながら意識の高い学生(笑)みたいな無知な信者を集めることに成功した、ごくごく一部の御仁だけが、プレゼンスを高めたり、あぶく銭を稼いでいった。自由で平等どころか、むしろ階級社会化していったとオレはとらえています。「ネット階級社会」の出現です。新著の帯には「99.9%はクリックする奴隷。」という見出しが立っているのですが、極めて少数の勝者から、膨大な弱者が時間やカネを搾取されるような構図が、現代のインターネット社会の現実なんです。“勝者総取り”が実社会以上に露骨なのが、ネット。これは、本書を執筆する大きな動機となり、全編を通じてテーマとなっている視点でもあります。

●ネットの理想が崩壊した事件の数々

── ネットのエヴァンジェリストたちの発言力が落ちた、というのは?

中川 彼らは要するに、ネットの理想や夢物語ばかりを一面的に語っていただけなんです。それは原理原則論では正しい。ですが、その“お花畑感”は、あられもないネットの現実に覆されていったんです。人間の下世話な部分、汚い部分、せこい部分など、さまざまな欲望が露骨に表れるのがネットの世界ですから。理想論やキレイごとしか語らない彼らの薄っぺらさに、次第にネットユーザーも気付いていきました。その結果、エヴァンジェリストたちは徐々に影響力を落としていったんです。

『ネットのバカ』


技術はバカに勝てない。ネットの世界の階級化は進み、バカは増える一方だ。「発信」で人生が狂った者、有名人に貢ぐ信奉者、課金ゲームの中毒者……「ネット階級社会」の正しい泳ぎ方を示す

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