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テレビ視聴時間、5年前と変わらず…だがテレビ局番組の視聴時間は大幅減少

文=清談社、協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所所長
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「gettyimages」より

「若者のテレビ離れ」が叫ばれて久しい。地上波のテレビ番組以外にも、ネット動画や配信サービスなどさまざまな視聴コンテンツが溢れており、スマホやタブレットなどで好きな動画を好きな時間に個々で楽しむという時代に突入している。テレビモニタ「REGZAシリーズ」を発売しているTVS REGZA社が発表したデータによると、視聴者のテレビ画面を見ている時間そのものには大きな変化はないという。同社は、REGZAのユーザーから同意を得て収集した300万台分の視聴データを分析。それによると、2022年の「1日の平均テレビ画面利用時間」は6.6時間と、5年前の18年と比較してもほぼ変わらないという結果になった。

 しかし、視聴されているコンテンツは、地上波のテレビ番組に代わって、ネット動画が大きく伸びているという。ネット動画を1日のうち1時間30分以上テレビ画面で視聴しており、動画配信サービス利用時間も2割ほど拡大しており、テレビ画面は観ているが、地上波テレビ番組は観ていないということのようだ。次世代メディア研究所の鈴木祐司氏はいう。

「まず前提として、これはREGZAのデータなので限定的に捉えたほうがいいと思います。300万台のうち、それが単身世帯なのか、視聴している年代はどのくらいなのかといった重要な要素が抜けています。また、18年と22年を比較して、平均視聴時間が6.6時間とほぼ変わらないということですが、その間の20年、21年は7.3時間と増えている。コロナ禍によるステイホームでテレビ視聴時間が特例的に伸びたということですが、23年度でまた下がっているということにも注目したいです」(鈴木氏)

 テレビだけでなくスマホやタブレットを含めると、個人がいくつも動画視聴可能なスクリーンを所有している時代。どのコンテンツが、どんなデバイスで、どれくらい観られているかを計るのは難しい。

「全体としては地上波テレビ番組のライブ視聴がどんどん下がっているというのは事実です。『REGZA』のタイムシフトユーザーは、地上波テレビを全録画して平均以上に見ているというデータも出ていますが、通常の録画再生での視聴は減っています。ライブ視聴はもちろん、録画においても地上波テレビ番組は全体的に観られていないといっていいでしょう」(同)

YouTube動画の視聴者が増加

 テレビ局が製作した番組を観る手段はリアルタイムだけではない。録画視聴をはじめ、各局が運営しているVODサービスや、「TVer」などの見逃し配信サイト、さらにU-NEXTなどの有料動画配信サービスでも番組単位で視聴することできる。

「そこで勃発するのが『可処分時間』の取り合いです。一般的な社会人が、夜の19~22時ぐらいまでを余暇として娯楽に当てる時間帯であることは、変わっていません。その時間帯で手にするのが、スマホなのか、タブレットなのか、PCなのかということもありますが、そこで観るコンテンツとして、地上波テレビ番組が選ばれていない。では何が圧倒的に強いかというと、やっぱりYouTube。家庭のテレビで、テレビ局の作ったコンテンツではなく、膨大なYouTube動画を観ている視聴者が増えていることは確かです」(同)

 テレビ番組が飽きられているということなのだろうか。

「地上波テレビは、夜の7時から11時までの4時間をプライムタイムといい、1週間で28時間分の枠があります。そのうちの7割ぐらいはバラエティ番組です。ドラマが2割で、あとの1割はニュース番組。なので、視聴率が下がったということは、バラエティ番組の力が落ちたということになります。2010年代の後半ぐらいまで、バラエティ番組はテレビ局にとっての最適解だったんです。視聴率トップを走っていた日本テレビは、ゴールデンタイムのほとんどの時間をバラエティ番組で埋めていた。景気が悪く、予算が縮小していくなかで視聴率を取るためには、バラエティ番組がもっとも効率的なコンテンツでした。ところが今、視聴率がもっとも下がってるのが日本テレビ。それにバラエティ番組は配信サービスでもあまり視聴回数を稼げていないのが現状です」(同)

 バラエティに変わるコンテンツとして、各局が力を入れているのはドラマだ。良質な作品を作れば、見逃し配信を含めて何度も観られる可能性が高い。

「確かにドラマ枠は増えています。フジテレビは10月から金曜日の9時もドラマ枠にして、週5本も放送しています。テレビ朝日も日曜日の夜10時台にドラマを増枠するなど、各局が力を入れています」(同)

テレビ局はコンテンツプロバイダーに

 TBSが7~9月期、制作費が1話1億円といわれたドラマ『VIVANT』を仕掛け、大きな話題となった。しかし、視聴率はそれほど伸びなかったため、地上波の広告収入だけでは莫大な制作費を回収できないのではないかともいわれている。

「TBSは手堅い会社です。キー局でTBSだけが地上波の広告収入のマイナスの部分を見逃しサービスとコンテンツの有料配信で補っている。『VIVANT』は、TBSがU-NEXTに出資して回収できる体制も整えたタイミングで仕掛けており、ビジネス的な勝算を計算したうえで製作していると思います」(同)

 今後、地上波のライブ視聴率が劇的に改善することも、広告収入が増えることもない。その上で、各テレビ局は次の一手を模索している状況だ。

「地上波テレビ局というのは、インフラビジネスです。自前で構築した放送枠を使って、広告収入を得るというビジネスモデルでした。それが崩壊しつつあるいま、これまで2兆円近くあった広告収入を他で補わなくてはならない。今後、テレビ局は番組を製作・配信していくコンテンツプロバイダーとしての色合いが濃くなっていくでしょう」(同)

 視聴者の時間の取り合いと、スポンサーの広告予算の取り合い、という過酷な競い合いのなかで、テレビ局のコンテンツ制作力が問われていくことは間違いなさそうだ。

(文=清談社、協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所所長)

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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