弥生は5日、会計ソフト「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」「弥生会計(やよいの青色申告)」で確定申告データの送信(電子申告)を行い完了しているように見えるが、実際には国税庁にデータが送信されていないという不具合が生じていると発表した。弥生は「再度電子申告を行っていただきますようお願いいたします」と呼び掛けているが、SNS上では「洒落にならない」「恐ろしい不具合」「気づかなかったら無申告になる」など悲鳴が続出する事態となっている。
個人事業主向けクラウド青色申告ソフトである「やよいの青色申告 オンライン」はクラウド申告ソフトウェアとしてはシェア1位であり、登録ユーザ数は310万に上る。ベーシックプランは年額1万3800円(税抜き)で、入力作業を自動化できる点や初心者にも使いやすい機能が特徴となっている。
「銀行明細、クレジットカードなどの取引データ、レシートや領収書のスキャンデータやスマホアプリで撮影したデータを自動仕訳するので、入力と仕訳の手間が省けます」(弥生の商品サイトより)
「簿記知識がなくても、日付や金額などを入力するだけで、青色申告に必要な複式簿記帳簿が自動作成できます。青色申告特別控除もラクラク」(同)
同社によればクラウド会計ソフトでは弥生のソフトのシェアは52.8%におよび、2人に1人が使用していることになる。
<業務にはクリティカルなバグでヤバい>
そんな同ソフトで今回発生した不具合は、確定申告e-Taxオンラインで確定申告データを送信(電子申告)すると、画面上では同処理が完了しているように見えるが、実際には国税庁にデータが送信されていないというもの。該当期間内に弥生製品からメッセージボックスを確認すると、動作確認テスト用の内容が表示される不具合もあったという。不具合が発生していた期間は11月13日から12月4日で、修正プログラムがすでに提供されており、現在は確定申告e-Taxオンラインで送信を行うと正しく国税庁に送信される。弥生は5日付けリリースで「お手数ではございますが再度電子申告を行っていただきますようお願いいたします」と呼び掛けているが、SNS上では以下のような声が続出している。
<業務にはクリティカルなバグでヤバい>
<致命的>
<気づかずに無申告になっていたらこわい>
<この時期にこれは何という地獄の所業>
<これで延滞税とかの追徴課税くらったら弥生に請求していいんかな?>
<多少の不具合はまあしゃーないなで済ませるけどこれは斜め上だわ>
<こんなエラー出ても、コレ使い続けようってなるかな…>
<これは凄い不具合>
<酷いなこれ。お詫び申し上げるだけで済むのか>
<この地獄みたいなバグ>
確定申告の期間は原則、毎年2月16日~3月15日となっているが、中堅IT企業の役員はいう。
「諸般の事情で期間内に申告できなかった場合や、いったん申告したものの修正申告をする場合などは期間外でも申告できる。今回は『季節外れ』なので不具合で迷惑を被った人はそれほど多くはないだろうが、もしこれが通常の確定申告期間で起きていたら大変なことになっていただろう。確定申告を行うのは個人事業主などが多いが、副収入があったりで会社員でもやる人は少なくない。ただでさえ12月の今の時期は誰しもが忙しいので、面倒な確定申告をもう1回やらなければならなくなり怒っている人は多いだろう」
公認会計士・税理士の植村拓真氏はいう。
「もし今回のようなバグが確定申告期間にあたる2~3月に起きれば、大量の無申告者が発生する可能性もあり、大変な事態になるかもしれず、今の時期でよかったともいえる。オンラインでの申告では、本人がデータ送信して処理が完了したと思っていても完了していなかったというケースがまれに起こるので、e-Taxからの受信通知をチェックするなどして、処理が完了しているのかどうかをしっかりと確認することが重要です」
もし仮に不具合が発生していることに気が付かず、国税庁へのデータ送信が完了したと思い込んだままで放置していた場合、どのような不利益や損失を被る可能性があるのか。
「原則的には納税者本人の責任になるので、いったんは本人がペナルティーを負担した後、本人と弥生との間で、その損失を弥生側が補償するかどうかといった協議になってくるのではないでしょうか」(植村氏)
(文=Business Journal編集部、協力=植村拓真/公認会計士・税理士)