●競争激化する宅配市場
小売り各社は、宅配サービスを拡大している。インターネットの普及や高齢者・共働き世帯の増加に対応して大手スーパーはネットスーパー事業に注力し、異業種からの参入も相次いだ。
「進研ゼミ」などで知られる通信教育大手、ベネッセホールディングスは、来年から弁当の宅配事業に参入する。同社は多角化の一環として老人ホーム事業を展開しているが、同事業で培った食事提供のノウハウを宅配弁当に生かすとしている。
百貨店業界やスーパー業界が低成長・マイナス成長に苦しむ中で、食品宅配市場は気を吐いている。市場調査会社、矢野経済研究所がまとめた「食品宅配市場に関する調査結果 2013年」によると13年度(13年4月~14年3月)の食品宅配市場は前年度比4.1%増の1兆8816億円、17年度には12年度比で21.9%増の2兆2045億円に拡大すると予測している。年平均4.0%の成長が期待できる市場だ。
ネット時代の到来で伸びているのがネットスーパー。ネットで生鮮食品や日用品の注文を受けると発注者の最寄りの店舗が店内から商品を集め、宅配業者が自宅まで届けるシステムだ。西友が2000年に国内で初めて「西友ネットスーパー」を開始したのに続き、イトーヨーカドーが07年から、イオンは08年から本格参戦した。スーパーの売り上げが伸び悩む中、ネットスーパーが業績を下支えするかたちになっている。そして、いまではネットスーパーが宅配市場の5%のシェアを占めるまでになった。
宅配市場に新たに参入したコンビニは後発ということもあり、現時点では宅配市場の1%にも満たないが、なんといっても全国に張り巡らされた店舗網が強みだ。セブンの宅配事業1000億円の売り上げ計画は、一気に宅配市場の5%を占める規模になることを意味しており、もし達成されればネットスーパー全体とほぼ同じ売り上げを1社であげることになる。現在、食品宅配市場は生協の個配サービスがシェア51%と市場の過半数を占める。数年後にはネットスーパーとコンビニの宅配が、生協を激しく追い上げる展開になりそうだ。
宅配市場に殴り込みをかけたセブン&アイが、果たして同市場の勢力図に大きな変化をもたらすことになるのか? 今後の動向から目が離せない。
(文=編集部)