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小学館の社風を漫画家が一斉に批判…漫画家に「離れるなら全作品を絶版」通知

文=Business Journal編集部
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小学館(「Wikipedia」より/Kounoichi)

 昨年10月期の連続テレビドラマ『セクシー田中さん』(日本テレビ系)で、原作者の意向に反し何度もプロットや脚本が改変されていたとされる問題。同ドラマの制作にあたって原作者の芦原妃名子さんは、ドラマ化を承諾する条件として、原作代理人である小学館を通じて日本テレビ側に、必ず漫画に忠実にするという点などを提示していた。芦原さんは先月29日に亡くなり1週間以上が経過。小学館は社員向け説明会で経緯などを社外に発信する予定はない旨を説明したとも報じられているが(7日付「Sponichi Annex」記事より)、過去には連載の方向性を変えたいと相談した漫画家・新條まゆ氏に対して連載を終了すると伝え、読者への予告なしに休載させ、さらに新條氏から同社を離れる意向を伝えられたところ、新條氏の過去の出版物をすべて絶版にすると伝えていたことがわかった。かつて小学館の仕事をした経験を持つ漫画家たちから、同社の体質の問題点や同社から受けた苦い体験に関する告発が相次いでいるなか、同社の対応に注目が集まっている。

 小学館は、一般書籍からコミック、児童向け書籍、「CanCam」「Oggi」などのファッション誌、情報誌、「少年サンデー」「スピリッツ」などの漫画誌、学習誌など幅広いジャンルの出版物を扱う老舗の大手総合出版社。年間売上高は1000億円を超え、集英社とともに30社以上から形成される企業グループ「一ツ橋グループ」の中核的な存在となっている。

 そんな小学館を揺るがしているのが、同社出版の漫画誌「姉系プチコミック」で連載されていた『セクシー田中さん』のドラマ化をめぐる問題だ。芦原さんが提示していた「漫画に忠実にする」などの条件が、小学館側から日本テレビに正確に伝えられていなかった可能性があるともニュース番組『Live News イット!』(フジテレビ系/1月30日放送)などで伝えられているが、『虹色の龍は女神を抱く』などで知られる人気漫画家・新條氏はこの問題について言及。X(旧Twitter)上で次のようにポストしている。

<小学館声明なしか…残念ですね。私が小学館から出るっていうブログを書いて大問題になった時、小学館は朝イチの会議で「作家にあんな偉そうな発言をさせないように管理した方がいい」ってなった。かたや集英社の会議では「こんな事態になる前に作家さんが不満を抱えてないか、聞き取ろう」ってなった>(7日)

<この話は当時、私が小学館を離れても連絡を取り合ってた小学館の編集者がさすがに自社の対応に呆れて教えてくれた。いい編集者って小学館にもたくさんいるし、今でも顔も見たくない人いるけど、社風というのは変わらないのだな。ホントに残念だ>(同)

<(編集部追記:小学館の)社風が変わらない…これみんな言ってるね。以前関わってきた人、今関わってる人さえも。変わるチャンスはあったのに。なにもかもがもう遅い>(同)

 ここで出てくる<小学館から出るっていうブログを書いて大問題になった>というのが、前述の同社から「小学館を離れるなら絶版にする」と告げられたという事案だ。これは新條氏が過去に連載していた小学館の漫画雑誌との間で起きた出来事だが、新條氏は当時、自身のブログで

<「小学館は作家に対して、『漫画を描いてもらってる』という意識に欠ける」と。「仕事をさせてやってる」「売れさせてやってる」と思っている人間が多いということです>

と心境を綴っていた(すでに削除済)。

<この機会に社内構造や体質を改めてくれないと>

 小学館の体質については、多くの漫画家からも指摘が相次いでいる。『ハナシノブ~凛花捕物帳』などで知られる漫画家の高橋功一郎氏はX上に

<すごいな。作家側には絶対立たないその姿勢。自分がサンデーいた30年前と何も変わらない。ぶれないね!>(7日)

とポスト。現在、小学館の「ビッグコミックスペリオール」で『フットボールネーション』を連載中の大武ユキ氏は、

<今現在、小学館で連載をしている身としては、例の件で小学館の対応がおかしいとRPしたり発言するのはリスキーなのは十分分かってるけど、この機会に社内構造や体質を改めてくれないと、この先、安心して描けないと言う事は担当さんを通じて伝えてある>(5日)

とポスト。『ナッちゃん』などで知られる漫画家・たなかじゅん氏はX上に

<ボクの知ってるかぎり1988年当時からそういう社風でしたし>(8日)

<ボクは〇学館でデビューしましたが、隣の集英社に移って感じたことは「ここはなんて作家を大事にしてくれるんだろう…」ということでした。社風が全然違いました>(7日)

とポスト。『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』などで知られる漫画家の森田崇氏はX上に

<お世話になった出版社でもあるのでこの対応は悲しい。ただ、社というか業界の体質には思う所もあった 良い編集さんもたくさんいた。その方達が今反発し、改革してくれると信じる>(7日)

とポストしている。

「説明責任は免れない」との声も

 小学館の仕事をしたことがあるメディア関係者はいう。

「今はどうかはわかりませんが、小学館のある雑誌の編集部では正社員である編集者たちの島(=座席)と、委託契約などの記者たちの島が完全に分けられており、明確な上下関係が存在していた。編集部全体での飲み会も編集者と記者のテーブルがきっちり分かれていた。また、記者が編集者の承諾を得た上で取材して記事を書いたものの諸事情で掲載が見合わせとなり、その分の原稿料を支払ってくれないということもあった。

 大手出版社では大なり小なりそうした傾向があるものの、特に小学館には『社員が上、外部の書き手は下』という意識というか社風が色濃いと感じる」

 また、別のメディア関係者はいう。

「小学館のある雑誌での話だが、本来、委託契約なら契約書で決められた範囲の仕事をこなせば、ほかにどんな仕事をやろうと自由なはずだが、他社の媒体の仕事をしてはいけないという暗黙のルールが存在した」

 では、小学館はこのまま経緯の説明や調査を行わないのだろうか。テレビ局関係者はいう。

「ここまで漫画家をはじめとする作家など作り手側から批判の声があがり、加えて社内の現場社員からの反発も広がれば、メディア企業である同社が詳細な説明も調査もしないで幕引きをするというのは現実問題として難しい。小学館は芦原さんの代理人として日テレより芦原さんと近い関係にあったので、より真相を知る立場にいた当事者ともいえ、説明責任は免れない。ただ、小学館としては日テレとの関係という都合もあるし、過去および現在進行形の小学館の作品を原作とする映像化案件すべてに影響をおよぼすため、身動きが取れなくなっているのでは。当然ながら社内では担当者、担当部署への聞き取り調査を行っているだろうから、それを踏まえて対外的にどういう対応を行っていくのかという問題だろう」

 また、日テレ関係者はいう。

「日テレとしては、小学館とのやりとりを通じて最終的には原作者の承諾を得た脚本に基づいてドラマを制作しており、契約違反はないというスタンス。小学館と原作者の間でどのようなやりとりがなされていたのかは知り得ない立場なので、第三者委員会などを入れての正式な調査とその結果公表などをする動きは現時点ではない。社内では担当者などへのヒヤリングは行っているだろうが、小学館との関係も大事であり、一方的にウチの事情だけで動けないという面はある」

【過去の事例】

 小学館をめぐっては、過去にも作品の映像化において『セクシー田中さん』と同様の問題が起きていたという告発も相次いでいる。『しろくまカフェ』原作者の漫画家、ヒガアロハ氏は5日、X上で次のようにポスト。

<無期限休載するというツイートをしたら、翌日小学館へ呼び出され、編集長とメディア事業部の人たちに囲まれて「ツイートは削除しろ」と言われました>

<今でもうっかり思い出すととても悔しいのが、読者の方からのお手紙やプレゼントを全部捨てられていたこと>

<あれからもう10年も経つし出版社も変わったし「当時のツイートは消していこうか」と考えていた矢先の、今回の出来事でした。私も当時はものすごく叩かれました。芦原先生がブログ記事を書かれたのが他人事ではなかったです>

 ヒガアロハ氏は小学館の漫画雑誌「flowers」で『しろくまカフェ』を連載中だった2012年、同作のアニメ化に際して制作サイドに意見を伝える機会を与えられず、アニメ化に関する契約書も取り交わされていなかったため、旧Twitter上で無期限休載を表明。その経緯について当時、以下のように投稿していた。

<先日、編集部と制作会社と私とで、話し合いの場を設けてもらいました。私が意見を言える初めての機会となりました。これまでの半年間くらい、あちこちに頼み続けてたつもりだけど、一向に取り合ってもらえなかったから、長かった>

<今月からの休載宣言と、知的財産管理の専門家に文書を作成してもらって配達証明で送るという手段を取って、やっと動かすことができました。話し合いには弁理士さんも同行してもらった。編集部側に全面的に非があるということで、謝罪してもらいました>

<アニメ関連については、まだ契約書が作成されてなくて、私は1円もいただいてないっす>

(文=Business Journal編集部)

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