東芝の主力事業である半導体市場は明暗がくっきり分かれている。勝ち組はスマホ向けの半導体。負け組はテレビやデジタルカメラ、携帯電話などの情報家電に使われるシステムLSIと呼ばれる半導体だ。東芝は記憶装置として組み込まれるNAND型フラッシュメモリーで世界の2強に入る勝ち組であり、これからの主戦場は車載用半導体になると東芝は読んでいる。
東芝は半導体事業の活況が続くとして、13年度通期(14年3月期)の業績予想を上方修正した。従来予想に比べて売上高は2000億円増の6兆3000億円、営業利益は300億円増の2900億円。過去最高だった1990年3月期の3159億円に次ぐ水準に回復する。しかし、最終利益は1000億円と従来予想を据え置いた。
●第3の柱、ヘルスケア事業に積極投資
今期、東芝にとって大きな課題は2つある。
1つは、昨年8月の経営方針説明会で田中氏は、テレビ事業について「下期の黒字化」を宣言し「やらなければいけない。でないと嘘つきになる」と述べたが、実際に黒字転換できるかはいまだ不透明である。
もう1つは英原発事業会社、ニュージェンの株式の取得だ。スペインの電力大手、イベルドロラからニュージェンの株式50%を140億円で取得することで昨年末に合意した。東芝はニュージェンから原発設備を受注することを狙う。子会社の米ウエスチングハウス(WH)の設備を売り込む。
かつて東芝は半導体と原子力発電が経営の2枚看板だったが、今後はヘルスケアを第3の柱とする方針で、14年4月にヘルスケア事業本部を立ち上げ、営業の窓口を一本化する。13年3月期に年間約4000億円の売上高を、16年同期に同6000億円、18年同期に同1兆円に引き上げるという目標を掲げているが、そのためには大型のM&Aにより、手薄な試薬や予防医療の領域を強化する必要がある。
社長の田中氏は今年を、低迷から脱し反転攻勢に出る年と位置付けている。
(文=編集部)