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経営者「社員から取引先との会食の残業代が請求され困惑」→「当然」と反論続出

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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「gettyimages」より

<教えてください。飲み会に残業代を求める社員がいて、どう対応するべきか考えています。皆さんは残業代請求されますか?>――。ある企業経営者がX(旧Twitter)上にポストしたこんな質問が議論を呼んでいる。接待や取引先との会食、所属する部署の忘年会やチームの懇親会、上司との食事など仕事関係の飲み会は少なくないが、どこまでが業務とみなされ、また残業代の発生の有無はどのような基準で決まるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 飲みニケーションという言葉に象徴されるとおり、日本企業では夜の飲み会が多く、かつ重要視されてきた。40代の大手メーカー管理職はいう。

「私が20代の頃は週1回くらいは課長や部長に飲みに連れて行かされた。飲みの席でも上司なので当然ながら気を遣うし、粗相(そそう)があるとああだこうだと叱られるし、仕事の件で延々と説教されたりするので、完全に仕事の延長だったし、残業で仕事をしてるほうがはるかにマシだった。やらなければならない仕事がたくさん残っているのに飲みに連れていかされ、飲みが終わってフラフラになりながら再び会社に戻って仕事をすることも珍しくなかった。効率が悪すぎるし仕事のパフォーマンスも低下し、上司はそれを分かっているはずなのに、なぜ頻繁に飲みに連れて行くのか不思議で仕方がなかった。

 私の同期もみんな、上司との飲みを嫌だと思っていたし、無駄だと感じていた。自分が管理職になったら部下を飲みに誘わないようにしようと決めていたが、10年くらい前、働き方改革を言われ始めたころから、会社的に管理職が部下を業務後に飲みに誘うという行為を控えるべきという空気が広まり、本当に仲が良い間柄である以外は、部下を飲みに誘うということは減った。強制参加だった部署の忘年会なども、完全自由参加の形態をとるようになった。聞くところによると、若手社員からパワハラなのではないかという声が会社に届いたり、いろいろとトラブルが起きたことが原因のようだ」

<飲み会は、人間関係作るのに必要>

 そんな社内の飲み会をめぐり、ある企業経営者が今月、X上に冒頭の内容に加えて以下の見解も投稿。

<飲み会は、人間関係作るのに必要>

<友達ではないんだから、飲みたい人だけ飲むっていうの違和感>

<飲みにケーションは大事>

<飲み会に強制という考え方が、やばい>

<飲み会こない人とは、信用できない>

 また、少し前には別の企業経営者も

<うちの社員から取引先との会食にちゃっかり残業代が請求されていた。理屈はわかるし、勿論払うが、さすがにこれは我々の常識からすると面食らった>

とポストしていたが、これらの経営者の見解に対しSNS上では以下のような声が寄せられ、ちょっとした議論を呼んでいる。

<強制参加じゃないなら不要では?>

<取引先との会食はがっつり「商談」に近い重要な業務なので残業代の対象にすべきだと思う>

<外資ITセールスでは会食はもちろん勤務時間、出張は会社の承認を得て家を出てから帰宅するまでは全て勤務時間が当たり前です むしろ他の選択肢あるのかが疑問です>

<すべてにおいて就業時間内に対応すれば良いだけ>

<来なくても良いで良くないですか?自由で。残業代出してまで来なくて良いと思います>

<今の時代は残業代払う必要があるのかなと思います そこまでするなら、飲み会必要ないかなとも思いますが>

<就業規則で規定がないなら払わなくても良い>

<今はと言うか今後は残業代が必要な時代になっていくと思います。業務の一つと捉えられると思います。プラスして他社との飲み会(接待含む)はほぼ業務ではないでしょうか?>

「社外の人との飲み会は残業代も支払い」ルール化が必要?

 40代の大手IT企業の管理職はいう。

「企業にもよるが、上司に飲みに誘われたり、部署の懇親会や取引先との親睦目的の飲み会では、現実的にはきっぱり断れずに事実上の強制出席となるケースも多く、残業代を払うべきかどうかは難しいところだろう。少し前までは、部署の忘年会や年度終わりの慰労会のたびに若手社員が幹事をやらされて、店の確保や当日の進行など結構な負担がかかり、完全に業務と化していた。結局、会社組織である以上は社内の飲み会は強制力が生じてしまい、『出席したくないけど出席する』『出席しないとシコリが残る』ということが起きるので、個人的には『社内の飲み会は廃止』『上司が部下を飲みに誘うのは禁止』『社外の人との飲み会は残業代も支払い、飲食代は経費負担』をルール化したほうがよいと思う」

 40代の大手メーカー管理職はいう。

「ウチの会社は営業が接待目的で顧客と会食する際に残業代も出ないし飲食代も自腹。顧客の飲食代だけ経費を使えるが、明らかにおかしい。加えて社内の部署の懇親会的な飲み会も多く、すべて自腹。以前に女性の部下から『部署の飲み会でお酒飲めないのにお酒を強要されるのがツライ』『業務後も時間を拘束されるのは泣きたくなる』と言われたことがあり、私自身も若手の頃から飲み会で時間を浪費させられるのが苦痛だったので、会社として真剣に取り組むべき問題なのではないかとも感じる」

 40代の中堅IT企業役員はいう。

「ウチの会社では管理職に対して『基本的には部下を飲み会に誘ったり、部署の飲み会を開いたりはしないでください』と言っている。飲み会があると、嫌なのに渋々参加する人というのは出てしまうし、アルコールが入ると何かとトラブルが起きやすいので、やるメリットがない。部署やチーム内でコミュニケーションを深める必要がある場合は、業務時間内でもよいのでどこかの店や会議室でお菓子でも食べながら懇談してくれとしている。昼であれば長くても1時間くらいだし、そのほうが業務効率上マシ」

取引の継続が目的の会食であれば残業代が発生し得る

 法的には、社員の夜の取引先との会食や接待の時間分について、会社は残業代を支払わなければならないのか。もしくは、社員には残業代を請求する権利はないのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「一般的には、ということになりますが、任意参加型であり、また、取引先との『親睦』のためであれば業務性が薄いので残業代が発生する可能性は低いと考えられます。もっとも、強制参加型の場合や、新規の取引、取引の継続が目的の会食であれば、業務性が高いので残業代が発生し得ます」

 では、社員の夜の取引先との会食や接待の食事代について、会社は食事代を負担しなければならないのか。もしくは、社員は「飲食して空腹を満たしたという個人的利益を得た」のは事実なので、食事代を請求する権利はないのか。

「同じように、任意参加、親睦目的であれば、会社が食事代を負担する必要はありません。新規の取引、取引の継続が目的の会食であれば経費性も認められるので会社が負担すべきです」(山岸弁護士)

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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