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ホロライブ運営会社が下請法違反→法務部長「年収900万円~」募集に不安も

文=Business Journal編集部
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カバー株式会社が所在する住友不動産東京三田ガーデンタワー(「Wikipedia」より/Beryllium Transistor)

 バーチャルYouTuber(VTuber)「ホロライブ」などを運営するカバー株式会社に対し公正取引委員会は、下請法違反があったとして25日、勧告・指導を行った。その一方で同社が現在、求人サイト上で法務部長を募集しており、一部SNS上では「今までいなかったってこと?」「『在宅OK』の項目が…」「副業OKになってる」などと話題となっている。業務内容は、法務責任者として主に法務組織の拡大・マネジメント、社内ガバナンスの整備強化・運用推進、事業の法的リスク分析を担当するというもの。必須経験として、事業会社の法務実務経験7年以上、事業会社の法務部長・課長相当ポジションとして部下複数名のマネジメントの経験3年以上を求めているが、想定年収が900万円~1500万円となっている点をめぐり「この程度の待遇で募集」「900万からって、上限からでも厳しい」などと、求めるスキル・経験の割に低すぎるのではないかという声も出ている。

 カバーは動画用のイラストやモデルの作成の発注先事業者に対し、契約上は必要とは分からない修正を無償で7回もやらせたり、「制作完了」との連絡後も「やり直し」をさせたり、支払期日を守らずに支払いが成果物の受領日の619日、約1年7カ月後になるケースがあった。無償で修正させていた事案は計243回(下請け事業者は23名)、支払遅延による遅延利息の金額は総額115万2642円に上る。下請け事業者からの納入後5日以内にカバーが検査を行うという契約条件になっていたにもかかわらず、納入日から277日後に検査が完了したり、検査期間を経過した後に無償で「やり直し」をさせたりするケースもあった。下請法では、最長でも受領日を起算日として60日目までに支払期日を定めて代金を支払う必要がある。

 カバーは公取委からの指導・勧告を受けてリリースを発表。「事業が急拡大し取引件数が増大したのに対し、取引先とのやりとりに抜け漏れや遅延が生じてしまっていた」などと説明している。

「低くはないと思います」

 そんな渦中にあるカバーは現在、求人サイト上でCLO(チーフリーガルオフィサー:最高法務責任者)候補となる法務部長を募集している。上記の必須スキルのほか、歓迎スキルとして、

・エンタメ業界、IT業界、広告業界、Web業界いずれかでの法務実務経験
・M&Aにおける法務デューデリジェンスのご経験
・英文契約取り扱いのご経験
・ビジネスレベルの英語力

を設定。想定年収は900万~1500万円、月給60万円以上、賞与実績は年2回(業績連動)で、「Wワーク可能」「在宅勤務」という記述もみられる。その内容をめぐり給与が低いという指摘も出る事態となっている。

 法律事務所勤務の弁護士はいう。

「結論からいうと、低くはないと思います。今回の求人では弁護士資格の所持は条件にはなっていませんが、弁護士資格を持つ人が一般企業に所属する社内弁護士になった場合、他の社員と同様にその企業の給与体系のなかに組み込まれるため、年収も一般の会社員と同じ水準となります。ですので、カバーの法務部長に弁護士資格を持つ人が就いても、これくらいの年収が妥当でしょう。また、カバーは業績は良いものの設立からまだ8年で、会社の規模も大企業といえるほどではないので、部長で900万円というのは、むしろ高いほうではないでしょうか。

 それよりも気になるのが、このタイミングで法務部長ポストの求人を出しているという点です。今いる法務部長が辞めるので後任を探しているのか、今まで法務部長に相当する役職者がいなかったのかは分かりませんが、社内のコンプライアンス体制や適正な業務プロセスを早急に整備しなければならないこのタイミングで、その責任者に当たるポストの募集をかけなければならないというのは、ステークホルダーに不安を感じさせるでしょう」

カバーの業績は好調

 2016年創業のカバーは、主にVTuberプロダクション「ホロライブプロダクション」運営で急成長を続ける2次元コンテンツ企業。所属するVTuberのライブ配信、動画・アニメ出演、楽曲リリースなどを展開。たとえばグループ「ホロライブ」には約311万人のチャンネル登録者数を有する「宝鐘マリン」をはじめ30名以上が所属し、YouTubeの総チャンネル登録数は8841万(24年3月時点)、関連動画の年間再生回数は41億回に上る。ホロライブは海外にもファンが多いことも特徴で、地域別タレントチャンネル登録者数は約3割を海外が占める。

 ネット上での展開やVTuberをARで写真・動画を撮影できるスマートフォン向けアプリ「hololy」などに加え、リアルでの音楽ライブやイベントなども幅広く展開している。売上構成比としてはフィジカル/デジタルのVTuberグッズ販売である「マーチャンダイジング」が全体の41.4%を占め、24年3月期の累積グッズ出荷数は240万個。

 業績は好調だ。24年3月期の売上高は前年比47.5%増の約302億円、営業利益は同62%増の55億円、純利益は同65%増の41億円。25年3月期も2ケタの増収増益を見込む。

(文=Business Journal編集部)

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