2022年5月、岸田総理が表明した「資産所得倍増プラン」は大きな反響を呼び、世間でも「貯蓄から投資へ」という意識が強まった。この機会に投資を始めてみようと思った人、実際に始めてみた人は少なくないだろう。
一言に「投資」と言っても、不動産投資や信託投資などさまざまな種類があるが、やはり王道と言えるのが「株式投資」だ。
JSDA(日本証券業協会)が2022年9月に発表した「個人株主の動向について」という資料によれば、個人株主数(延べ人数)は年々増加しており、2019年は5672.7万人、2020年は5981.4万人、そして2021年の年度末には6460.9万人にのぼっている。(*1)
そんな株式投資の実践する人にとって欠かせないアイテムがある。『会社四季報』(東洋経済新報社刊、以下「四季報」)だ。
この「四季報」は日本の上場企業の特色や業績、株価の推移、財務内容をまとめた季刊誌。日本の全上場企業の情報が1冊にコンパクトにまとめられており、その使い勝手のよさから「投資家のバイブル」とも言われる。
しかし、全上場企業の情報が載っているだけあり、ページ数は2000ページ以上。一体どのようにこの分厚い本を投資に活かせばいいのだろうか?
『会社四季報』を速読で読み解く方法
『「会社四季報」速読1時間で10倍株を見つける方法』(翔泳社刊)は、サラリーマン投資家として資産3億円を達成したVTuberのはっしゃんさんが、「四季報」の読み方や10倍株(成長株)を見つけるための活用法を伝授する一冊だ。
株式投資は「安く買って高く売る」が基本。つまり、これから成長し続ける企業を見つけて、そこに投資することが重要だ。はっしゃん流速読術では、そんな成長株を見つけるための「四季報」を3ステップで「速読」していく。ここではその中から2つ目のステップまでを簡単に紹介しよう。
●準備
「四季報」を速読するためには準備が必要だ。
用意すべきものは、まず何より本誌の最新号。また、速読時に使う「付箋紙」「指サック」も揃えておこう。付箋については、小さいサイズを選ぶことをすすめている。速読をはじめるときには、机の上にあらかじめ付箋を10~20枚程度貼っておくと、タイムロスを防げる。
●ステップ1/チャートを見て付箋を貼る
速読法最初のステップは「付箋を貼っていく」というもの。
1ページに見る時間は1秒程度。とにかく素早く読み進めていくことがポイントだ。では、わずか1秒でどこを見ればいいのか? それはページの上段にある「株価チャート」欄だ。そのチャートが以下の目安に当てはまるものに付箋を貼っていく。
(1)「形」 右肩上がりのチャート
(2)「色」 白い(陽線が多い)チャート
(3)「最高値」数字が右にある半年以内に最高値を付けているチャート
投資対象となるのは、株価が業績と連動し、右肩上がりとなっている成長株だ。次のステップでは業績を細かく見ていくが、まずは大まかに「右肩上がりのチャート」を選抜することで、短期間で全銘柄をチェックすることができる。
2000ページ以上ともなると時間がかかりそうだが、慣れれば1時間ほどで1冊を読み終えられるという。
●ステップ2/業績をチェックする
ステップ2では前述の通り、付箋を貼った成長株候補の業績を解読する。
ポイントは「売上」と「経常利益」の推移を確認することだが、この2つの中でも特に重要なのが「売上」の伸び。市場自体の伸びや市場内シェアの拡大は、長期的な上昇につながりやすいという。
また、「四季報」には過去数年の業績推移と、今期・来期の二期予想が記載されているが、特に注目するのは予想部分。ここで売上と利益がそれぞれ10%以上伸びていれば「成長株」として合格だ。一方、過去の業績については、もちろん増収増益であることが望ましいものの、必須条件ではないとしている。
業績をチェックした結果、明らかに対象外であれば付箋を剥がし、補欠候補であれば付箋の色を変えておくなどしておこう。
◇
最後のステップ3では、理論株価を使って企業価値を評価し、売買を判断する方法を教える。ツールや計算式なども登場し、少し難しい印象を受けるかもしれないが、売買の判断をするための重要なステップとなるため、本書を参考にじっくり腰を据えて取り組みたいところだ。また、本書は「長期保有」が基本スタンスであることも伝えておきたい。
マイナスになるリスクもあるのが投資だが、これからの時代は自分自身でお金を増やしていく必要がある。そこで知識や技法を身につけず、闇雲に行うのは危険なことだろう。 本書で公開されている速読法は株式投資初心者でも実践できる方法だ。「四季報」を上手に活用して、良い投資生活を送ってほしい。(新刊JP編集部)
【参考資料】
*1…「個人株主の動向について」(日本証券業協会)2022年9月21日
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/2021kozinkabunusidoukou.pdf
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。