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窓の目前に4段立体駐車場…江東区タワマン建設、野村不動産が周辺へ説明なしか

文=Business Journal編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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「Getty Images」より

 東京都江東区の越中島で、東京科学大学(旧東京医科歯科大学)が保有する土地に巨大マンションが建つ計画が進行しており、周辺住民から反対運動が起こされていると報じられている。報道によると、地上4段の立体駐車場が横並びになるため、すぐ向かいのマンションの低層階住民にしてみれば、目の前に駐車場が広がる状況になるという。周辺住民たちのたび重なる問い合わせに事業主の野村不動産は回答をせず、水面下で計画が進行していたことも、住民感情に火をつけた格好だ。高層マンションが建設されれば、周辺住民の景観などな多大な影響を与えることは自明の理ともいえるが、反対運動などは考慮せずに建設計画は進められるものなのだろうか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 東京都江東区の越中島で、高層マンションの建設が進められている。現在、東京科学大学が保有する越中島の土地にマンションなどが建っているが、そこを野村不動産が再開発して、高層マンションを建設するという。

 昨年、東京科学大(当時・東京医科歯科大)と野村不動産が再開発をすると発表し、周辺住民が野村不動産に問い合わせを行ったが詳細な回答はないままで、今年7月になって巨大な高層マンションの計画が明らかになったという。

 地上4段の機械式駐車場が横並びに埋め尽くされることから、目の前のマンションの低層階の住民にしてみると、自宅の窓の外の景色が一面、駐車場になってしまう状況だ。8月に行われた住民説明会でも、住民の要望に対して「計画を変更する予定はない」と突っぱねたとして、住民感情を逆なでする対応だったと報じられている。

タワマン建設に周辺住民とのトラブルは付き物

 一般的に、タワマンなどの高層建築を行う場合、日当たりや景観などにある程度の考慮をして、周辺住民の理解を得ながら計画を進めるのではないのだろうか。不動産事業のコンサルティングを手掛けるオラガ総研代表取締役の牧野知弘氏は、高層マンションの建築に住民トラブルは付き物だという。

「周辺住民と事業者のトラブルは、珍しくはないと思います。今、一番有名なのは東京・渋谷でNHKにつながる公園通り沿いに建設されることが発表されたタワマン計画に対して近隣に建つ別のタワマンの住民が『景観が妨げられる』と反対しているものです。今回報じられている内容と似たような要素があります」

 では、タワマンを建設する際に、地域住民の反対運動はよく起こるのだろうか。

「地域住民の反対運動自体は珍しくなく、タワマンではなくても閑静な住宅街に一般的なマンションを建てる場合など、周辺の方々から反対が起こることは常々あります」

 高い建物が自宅近くに建てば、日当たりの問題などもついてまわると考えられるが、タワマンを建てる際には、日照権のトラブルなどが広範囲にわたって発生するのだろうか。

「あらかじめ定められている都市計画などに則って建てる限り、以前のように周辺住民が日照権を主張するのは難しいと思います。事業主側は法令に則って計画を立てるので、法令違反によるトラブルはほとんどないと思います。よくあるのは、高い建物が建つことで家の中がのぞかれてしまう、といった個別の事情によるトラブルです。そういったことが起きないように、事業者側はなるべく角度を変えて建てたり、窓ガラスにシートを貼るなどの対応をとり、住民同士に嫌な思いが残らないように配慮します。

 今回報じられている内容でかわいそうだなと感じたのは、自宅の窓の外が機械式駐車場(立駐機)ということで、よくあることなのですが、対応としては立駐機と窓の間にフェンスを立てたり、立駐機の位置を少しずらすなどの対応は行ってもよいのではないかと思います」

反対運動を行う住民の主張の根拠

 タワマンを建てる側としては法令に則って建てるため、反対運動をする側としては、法的根拠を盾にするわけではないということか。

「当然、法令ですべてを包含できるわけではないので、微妙なラインや住民の感情的な問題もあります。法的に問題がなくても、マンションが建つことで周辺住民にとってマイナスになることはあるので、それを主張することはできます。それにまったく向き合わないとなれば、事業者としての道義的問題が発生します。かといって、『建ててほしくない』という要望があったとしても、事業者側にも建てる理由があるので、なるべく周辺住民の理解を得ながら調整することは、どの物件でも必ず行っています」

 住民としては、自宅の目の前にタワマンが建ってしまうのは“運が悪い”とあきらめるしかないのだろうか。あるいは、“タワマンが建ちそうな場所”はある程度の予測をすることが可能なのだろうか。

「湾岸のタワマンが建っているエリアを想像していただけばわかりますが、タワマンが建てられる場所であれば、その近くにさらなるタワマンが建つ可能性は十分にあります。また、さらに詳しく知りたい場合は、それぞれの行政区が出している都市計画図を見てもらえば、タワマンが建つエリアは予想ができるかと思います。仮に自分が買ったタワマンの目の前にタワマンが建つことを阻止するのは不可能です」

 タワマンを購入する人にしてみれば、周辺環境や眺望などに価値を見いだしていたはずだが、それでも自宅周辺に建物が建つことを阻止する権利はないというわけである。確かに、客観的にみれば、あるマンションは建てていいが、その近くに同じようなマンションを建ててはいけないとするのは、筋が通らないようにも思える。自宅近くに大規模な開発が行われそうな土地がある場合は、要注意なのかもしれない。

(文=Business Journal編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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