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経営難のJR北、レール腐食・破断が深刻で脱線事故…検査で異常検知も対策なし

文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト
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JR北海道
函館本線を走行する普通列車(「Wikipedia」より)

 11月16日未明に発生した、JR函館線の貨物列車の脱線事故の原因が、踏切付近のレールの破断だったことが物議を醸している。貨物列車5両が脱輪し、連結が外れた車両もあった。JR北海道はレールの著しい腐食が脱線の原因との見方を示し、同じような条件の道内24カ所の踏切を緊急調査。その結果、いずれも異常は見られなかったと発表した。だが、専門家はJR北海道の路線に関して、ひとまず安心だが、今後に不安を残すとの考えを示す。

 JR北海道は11月29日に記者会見を開き、16日に発生したJR函館線の貨物列車脱線事故を受けて、事故現場と同様の条件の踏切24カ所でレールの緊急点検を行った結果、いずれの場所においても異常は確認されなかったと発表した。

 JR北海道の説明によると、列車は機関車1両、コンテナ貨物車20両の計21両編成で、食品や宅配便の荷物を積載していた。森町の森-石倉間を走行中、先頭の機関車と貨車の5両目までがトンネルに入った状態で停車。12、15、17、19、20両目が脱輪し、20両目に至っては連結も外れた。事故現場の近くの踏切付近でレールが腐食しており、レールに長さ1メートル超の破断も見つかっている。この腐食が脱線の一因となった可能性が高いとの見解を示す。

JR北海道の検査で「異常なし」でも安心はできない

 この事故を受けてJR北海道は、事故現場と同様の条件の踏切24カ所について、レールの緊急点検を実施。超音波探傷器を使って点検したが、いずれの踏切でも異常は確認されなかったと発表。さらに、このうち5つの踏切では、念のため敷板を外して腐食状況を目視でも確認したとしている。だが、鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は、危険度が高いとみられる踏切の状態はよいとしても、他の場所には不安が残るとの見方を示す。

「JR北海道函館線で2024年11月16日に発生した貨物列車の脱線事故について、同社は鷲ノ木道路踏切に敷かれたレールの著しい腐食が原因である可能性が高いと述べました。国土交通省の規則では、腐食を含めたレールの状態は1年以内に定期検査を行わなければならないと定められています。通常、レールの摩耗や腐食の度合いはレール探傷(たんしょう)装置といって、超音波をレールの上から照射して検査する装置を搭載したレール探傷車または軌道検測車で調べています。同社も検査の結果、鷲ノ木道路踏切付近のレールに対して超音波の乱れが生じていたことを認めています。

 しかし、不具合の可能性が見つかったレールの詳細な検査がなぜ遅れたかについて、JR北海道は理由を明らかにしていません。考えられる理由は2つあります。

 一つは詳細な検査を行おうとしたものの、人手不足や資金不足といった理由で順番待ちとなり、この結果、修理が間に合わなくてレールが破断したというものです。もう一つは超音波の乱れは見つかったものの、当方は未確認ながら、同社の基準では再検査、修理の必要がないとされたために、様子見となったという理由です。今後の調査の結果が待たれます。

 どちらにしても、踏切上に敷かれたレールは踏切敷板によって一部が覆われているので詳細な検査は難しく、踏切敷板を外しての検査となると、さらに大がかりとなって人手や資金が不足しているJR北海道にとっては負担が大きいかったことも確かでしょう。

 JR北海道は2024年11月29日付ニュースリリース「函館線森・石倉間の列車脱線について(類似条件踏切の緊急点検結果)」で、鷲ノ木道路踏切のレールと類似の条件である海沿い、レール経年30年以上、曲線、レール探傷車の再検査箇所、貨物列車の走行区間にある24カ所の踏切を点検した結果、異常はなかったと発表しています。しかし、今回調査したのは脱線事故が起きた踏切と条件が似た踏切だけですので、他の場所の状況はわかりません。同社には2022年3月31日現在で鷲ノ木道路踏切や今回点検を行った24カ所の踏切を含めて踏切が1450カ所あり、営業列車が通る区間だけでもレールが延べ2924.1kmにわたって敷かれています。今後点検の範囲を広げていくとのことですが、相当な数がありますので完了までには時間を要します。毎年検査を行っているのでおおむね安全とは言えるでしょうが、不安は完全には取り除かれていないと思います」

 貨物のみならず人間も輸送する鉄道においては、“安全はすべてに優先する”という鉄則を遵守してもらいたい。JR北海道は資金不足や人手不足が指摘されて久しいが、これまでにも数回、脱線事故が発生しているほか、レール計測記録の改ざんや車輪取り付けの不正など問題もたびたび起きている。資金不足が安全を脅かす要因にならないことを望む限りだ。

(文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)

梅原淳/鉄道ジャーナリスト

梅原淳/鉄道ジャーナリスト

1965(昭和40)年生まれ。大学卒業後、三井銀行(現在の三井住友銀行)に入行し、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)、『JRは生き残れるのか』(洋泉社)、『電車たちの「第二の人生」』(交通新聞社)をはじめ著書多数。また、雑誌やWEB媒体への寄稿のほか、講義・講演やテレビ・ラジオ・新聞等での解説、コメントも行っており、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。
http://www.umehara-train.com/

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