業務スーパーの神戸物産、業績拡大の秘密…1,500店舗・利益率10%を目指す

●この記事のポイント
・「業務スーパー」をフランチャイズ本部として運営する神戸物産。25年10月期の連結業績見通しは売上高が5,250億円、純利益が240億円とともに過去最高を見込んでいる。
・自社グループ工場製造・店舗のローコストオペレーションで販売管理費を抑えることで、お客様により安価で良質な商品を提供することを実現。
・店舗数1,500店舗以上、PB比率40%以上、外食事業で500店舗以上、営業利益率10%以上を目指す。
大容量・低価格の食品を豊富に取り揃える「業務スーパー」を運営する神戸物産の業績が好調だ。2023年11月~24年10月期連結決算は、純利益が前年同期比4.3%増の214億円を記録。25年10月期の連結業績見通しは売上高が5,250億円、純利益が240億円とともに過去最高を見込んでいる。全国約1,100店舗を出店した今も毎月、新規出店を重ねている。今回は、神戸物産の衰えを知らない業績拡大の背景にある取り組みや戦略について話を聞いた。
●目次
自社グループ工場製造・ローコストオペレーションで低価格を実現
――貴社の業績が順調に伸びている要因についてお聞かせください。
当社は「良い物をより安く」を大義としています。品質を維持しながらも安い価格で商品をご提供するための、サプライチェーンや店舗運営の仕組みの改善と「食の製販一体体制」の強化を進めてきたことが、今の業績に反映されているのだと考えています。
「食の製販一体体制」として、国内にある自社グループ工場で1,100店舗以上ある業務スーパーのみで販売するオリジナル商品を製造しています。原料から製造工程まですべて神戸物産グループで企画したのちに、自社グループ工場で製造し、業務スーパー各店に卸すというプロセスのため、高品質の商品をベストプライスで提供できることが当社の強みです。加えて、約1,100店舗という規模のスケールメリットを活かした大量仕入れも、低価格を実現するための重要な要素となっています。
そして、業務スーパー店舗においてその安さを実現しているのが「ローコストオペレーション」です。ローコストオペレーションは人件費を抑えて、店舗運営を実現する取り組みです。たとえば、商品補充の場合、通常のスーパーでは商品を棚に入れ、余った商品をバックヤードに運ぶ必要がありますが、当社ではそういった作業をできるだけおこなわないような店舗設計を採用しています。
具体的には、商品棚を十分な奥行きで設計し、商品1ケースをまるごと陳列できる仕様としています。また、冷凍商品用に大容量の冷凍什器を導入することで、大量の商品を一度に陳列することが可能です。これが実現できるのは、商品を自社で企画しているため、商品の入数や規格をコントロールできるからです。
また、「エブリデイロープライス」という方針を採用しており、日替わりセールのような販促活動は基本的に行いません。これは、チラシなどの広告費や、セール用の売り場作りにかかる人件費や時間を削減するためです。このように販売管理費を抑えることで、その費用を商品価格に還元し、お客様により安価で良質な商品を提供することを実現しています。
――全国スーパーマーケット協会のデータによると、業界の平均営業利益率が約1%である中、神戸物産は約7%という数字を示しています。営業利益率の高さは、好調な業績の要因の一つなのでしょうか?
はい。ただし、業務スーパーはFC(フランチャイズ)オーナー様による出店という形態が主であり、神戸物産はFCオーナー様の店舗に対して卸し売りを行う企業です。この点は一般的な小売りとしてのスーパーマーケットとはビジネスモデルが異なっています。
ロイヤリティとしては仕入れ額の1%を頂いておりますが、当社の主な収益源はロイヤリティではなく、自社グループ工場で製造した商品や、海外の工場から直輸入した商品を業務スーパー店舗に卸すことで利益を得ています。
店舗に関しては、賃料、人件費、水光熱費などの販売管理費はFCオーナー様が負担しますが、当社は経営資源を商品の開発と改良に集中投下できます。また、店舗運営と新規出店をFCオーナー様に委ねることで、当社はより良い店舗を作るための、経営や店舗運営のアドバイスに注力・専念できます。当社の強みである業務スーパーオリジナル商品を店頭に並べてもらうことで、お客様の来店動機を生み出し、FCオーナー様が売上と利益を伸ばすことで、さらに店舗を出店してもらい、当社はより多くの商品を製造・出荷するというかたちでFCオーナー様と支え合っています。
ニッチな商品の取り扱いが来店促進につながる
――貴社の強みとなっている取扱商品の特徴を教えてください。
当社の商品は、「NB(ナショナルブランド)商品」「国内PB(プライベートブランド)商品」「輸入PB商品」の3つに分類できます。
NB商品の特徴は、有名メーカーにこだわらない点です。業務スーパーの店舗は他社スーパーと比較すると狭いため、取扱い商品を厳選しています。ネームバリューにこだわらず良い商品を積極的に取り扱うという方針で選定しています。知名度が少ない商品でも、安くて品質の良い製品が多くあるんですよ。
国内PB商品の特徴は、当社の完全オリジナルの商品である点です。他社スーパーのPB商品は、メーカーに委託して作るOEM商品が多いのですが、当社は国内に15社27工場ある自社グループ工場で製造しています。そのため、お客様のニーズや時代に合わせた商品を柔軟に製造できることが大きな強みです。
輸入PB商品は、世界約50の国や地域から商品を直接仕入れています。メーカーや問屋を介さない直接仕入れにより、中間マージンを省いたベストプライスでの提供を実現しています。また、世界の本物を直輸入し各国の有名な食品はもちろん、現地でしか知られていないような珍しい商品も多く取り揃えています。
――ニッチな需要に応える商品展開は、どのように利益につながっているのでしょうか?
他社では置いていない商品を業務スーパーで提供することで差別化を図り、それによって売上を確保していく戦略を取っています。店舗の大きさには限りがありますので、すべての商品を扱うことはできません。鮮魚の取り扱いがない店舗も多く、鮮魚が必要な場合は他社スーパーをご利用いただく必要があるでしょう。必ずしも業務スーパーだけを利用してほしいとは考えておらず、他社スーパーとの共存を目指しています。ただし、共存しながらもオンリーワンでいたいと考えています。
近年、海外から多くの労働者の方々が来日されていますが、母国の食品を入手することが難しい状況です。たとえば、ハラール商品は一般のスーパーではほとんど扱っていませんが、当社では積極的に取り扱っています。その結果、ハラール商品を望まれるコミュニティの中で「業務スーパーにはハラール商品がある」という評判が広がっており、多くの方々にご利用いただいています。このような商品の品揃えによって、お客様の来店頻度の向上にもつながっているのです。
食のインフラ企業を目指す
――今後の成長戦略についてお聞かせください。
長期目標としては、業務スーパーの店舗数国内1,500店舗以上、PB比率40%以上、外食・中食事業で500店舗以上、そして営業利益率10%以上を目指しています。これらの目標達成のための戦略として、主力事業である業務スーパーの継続的な既存店成長と新規出店に注力します。商品面では、自社グループ工場の新設や設備投資の継続による生産能力の増強、直輸入商品の取り扱いを拡大することで、業務スーパーの強みであるPB商品のさらなる充実を図っています。
当社が目指しているのは「食のインフラ企業」です。インフラというと電気・ガス・水道のような、生活に欠かせないものというイメージがありますよね。インフレ下でも安く提供でき、他社にない商品を取り揃え「地域に業務スーパーがあって助かった」と思っていただけるようになりたいと考えています。
今後も「良いものをより安く」という理念のもと、品質を維持しながら価格を抑えた商品を提供するため、食の製販一体体制の拡大に注力していきます。
(文=福永太郎/編集者・ライター)