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アマゾン、物流業務で75万台のロボット導入…ヒト型ロボットも導入、人間と置き換えコスト削減か

2025.07.22 2025.07.21 19:39 企業
アマゾンジャパンの公式サイトより
アマゾンジャパンの公式サイトより

●この記事のポイント
・米アマゾン・ドット・コムが全世界の物流業務で75万台以上のロボットを運用していると公表
・AIを搭載したヒト型ロボットの導入について実験中
・アマゾンは公式には従業員の労働災害の削減と処理コストの削減が目的だと説明しており、人員削減によるコスト削減だとは明言していない

 米アマゾン・ドット・コムが全世界の物流業務で75万台以上のロボットを運用していると公表した。同社は今月、AIの導入によって今後数年間で従業員の数を削減するとの見通しを示したが、積極的なロボット活用の目的は大幅な人員削減によるコスト削減なのか。また、同社は物流拠点などでAIを搭載したヒト型ロボットの導入について実験中であることも明かしたが、米半導体大手・NVIDIA(エヌビディア)のジェンスン・フアンCEOは「次のAIの波はフィジカルAI(物理AI)」だと強調するなど、同領域ににわかに注目が集まっている。同社は開発基盤モデル「Cosmos」やロボット向け開発環境「Isaac」を、米Google(グーグル)はロボット工学向けAIモデル「Gemini Robotics」を運用するなど、有力テック企業が注力し始めているが、ヒト型ロボットは従来のロボットとは何か違うのか。そして、その普及は社会にどのような影響をおよぼすのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

多くの場面でヒト型ロボットが増えていく

 ニューズフロントLLPのパートナーの小久保重信氏によれば、アマゾンの物流業務で使われているロボットは多岐にわたる。

「アマゾンは2012年に米スタートアップのキバ・システムズを買収して、当初は倉庫内で搬送用ロボットを運用していましたが、現在では進化して完全自律走行型搬送ロボット『プロテウス』が稼働しています。AIによる画像認識によって従業員との衝突を回避し、人間による操作が不要で自動で搬送を行うことができます。ロボットアーム型の『カーディナル』や『ロビン』は、荷物を持ち上げて宛名のところに仕分けする機能を持っており、これも進化して現在では梱包箱ではなく商品パッケージそのものをピックアップして仕分けする『スパロー』も使われています。ラックの高い場所から商品をピッキングして別の場所に格納するロボットもあります。

 そして23年にはアジリティ・ロボティクスというスタートアップが開発した二足歩行型ロボット『ディジット』を導入しましたが、これはまだ実験段階で、現時点では空のコンテナを回収して任意の場所に搬送するということを検証している段階です」

 従来型のロボットとヒト型ロボットは何が違うのか。

「ロボットアームなど従来のロボットは、人ができないことをやるというのが大きな意義でしたが、人ができることを代替するのがヒト型ロボットです。従来の大規模なロボットとは異なり、ヒト型ロボットはサイズが小さく手先で細々した作業を行うことができ、移動もできて、ヒトがやることをより正確に行えるというのが特徴です。大型ロボットが入れない場所に入れたり、階段を昇り降りできるように改良されていけば、どんどん人と置き換わっていくでしょうし、搭載されるAIの性能も向上していくので、物流・製造現場に限らず多くの場面でヒト型ロボットが増えていくと考えられます」

AIによるホワイトカラー職の代替が始まった

 アマゾンがロボットの導入を進める大きな目的は、やはり人員削減によるコスト削減なのか。

「アマゾンは公式には従業員の労働災害の削減と処理コストの削減が目的だと説明しており、人員削減によるコスト削減だとは明言していません。処理コストについては25%削減されたと言っていますが、結果的にはコスト削減効果が生じると考えられます。

 先日、アマゾンのアンディ・ジャシーCEOが従業員宛ての書簡で、今後はオフィス勤務のホワイトカラーの従業員の数も減っていくと記していますが、多くの人がいつか来る未来と予想されていた『AIによるホワイトカラー職の代替』が、ついに世界最大級のIT企業によって具体的に経営戦略として公言されたとして議論を呼んでいます。ジャシーCEOは従業員に対して、AIに好奇心を持って自己研鑽に励み、可能な限りAIを使い実験してほしい、それが会社が生き残っていくための原動力になるといった主旨のことを言っていますが、アマゾンに限らず、これは今では世界共通でいえることでしょう。

 多くの人が生成AIを使うようになって、AIエージェント同士が連携して自発的に動作するようになり、あらゆる領域で『人がいらない』という時代に向かっていくでしょう。その一方で、新しい職業が生まれるという現象が起きるのではないでしょうか」

 企業へのAI導入支援を手掛ける企業の役員はいう。

「すでに製造現場ではファクトリーオートメーション(FA)といったかたちでロボットの導入により省人化が進んでいるが、現状ではヒト型ロボットの導入はあまり進んでいない。物流拠点は規則的ではない動きが多いため自動化が難しく、ヒト型ロボットがどれほど速いスピードで導入が進んでいくのかは予測が難しいものの、中長期的には導入が進んでいくことは確かだろうし、それによって人件費が削減されなければ導入する意味がないので、当然ながら現場に従事する人の数は減ることになる。もっとも、人手不足解消につながる面もあり、どうとらえるのかは難しい」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー)

小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー

小久保重信/ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、JBpress『IT最前線』や日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」で解説記事を執筆中。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。
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