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魚肉ソーセージ、なぜ登場から70年目の「密かなブーム」?マルハニチロの緻密な戦略

2025.07.30 2025.07.30 23:01 企業
提供:マルハニチロ
提供:マルハニチロ

●この記事のポイント
・日本で登場してから70年以上たった魚肉ソーセージの売上が、ここへきて伸びている。
・魚由来のたんぱく質やカルシウム、DHAなどが配合され消費者の健康志向にマッチ。畜肉ソーセージなどと比較して割安な価格。
・中性脂肪低減効果のある商品や疾病リスク低減トクホの商品も。

 日本で登場してから70年以上たった魚肉ソーセージの売上が、ここへきて伸びている。魚由来のたんぱく質が手軽に摂れ、カルシウム、DHAなどが配合されていることから消費者の健康志向にマッチしているのに加え、ここ数年の物価上昇で畜肉ソーセージなどと比較して割安な価格である点などが受けている。さらに「密かなブーム」の背景を探っていくと、メーカーの地道な努力が垣間見えてくる。メーカーへの取材を交えて追ってみたい。

●目次

健康に良い成分が配合されている商品が注目

 魚肉ソーセージの製造・販売を手掛ける大手食品メーカーのマルハニチロ。水産物の調達に強みをもち、缶詰・びん詰・ちくわ・練りものなどを取り扱う同社の主力商品の一つがフィッシュソーセージだ。「うなぎ」や「のどぐろ」など全国各地の魚を原料に使った使ったものなど多彩な味のバリエーションを提供しており、「DHA入りリサーラソーセージ」「おはだのごちそう D-HADA(ディーハダ)」「1秒OPENおさかなソーセージ」など、販売している「フィッシュソーセージ」は常時60種類近くに上る。

 同社の魚肉ソーセージ製品の売上高は伸びている。2024年度は前年度比1~2割増加となっており、25年も好調に推移。23年までは毎年、微増微減を繰り返しほぼ横ばい状態だったが、24年度に大きく伸長した。その理由について、マルハニチロは次のように説明する。

「人々の健康意識の高まりから、魚由来のたんぱく質を摂取でき、カルシウムやDHAなどの健康に良い成分が配合されている商品があることが注目されています。物価高の昨今、畜肉ソーセージの価格と比較し、手に入りやすい価格であること、常温で保存でき、ハサミを使わずに手で開けられることから防災備蓄品として注目されていることなども影響していると考えております。軽食にはもちろん、おつまみや料理素材としてなど、幅広い食べ方ができる点、さまざまな魚種由来の中身にこだわった商品が開発されている点もご評価いただいています」

グローバルなバリューチェーンを活かす

 同社が販売拡大のためにさまざまな取り組みを推進したことも、売上を押し上げたという。

「弊社商品の『DHA入りリサーラソーセージ』が、2005年にフィッシュソーセージとして初めて特定保健用食品の認可を受けました(中性脂肪低減効果)。本商品の製造ノウハウや知見を活かし、心血管疾患のリスクを低減する日本初の疾病リスク低減トクホのフィッシュソーセージ『DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)』を2024年2月に発売。人々の健康意識の高まりに対応しています。

 その他、カルシウム入りや減塩タイプなど、さまざまな切り口でお客様のニーズに応えることができるよう商品開発を行っています。また、『フィッシュソーセージはフィルムがむきにくい』というお客様の声にこたえるべく、1秒でOPENできるような開けやすいフィルムを開発するなど、既存品のブラッシュアップにも力を入れています」(同)

 前述のとおり豊富な商品ラインナップを揃えている点も同社の強みだ。

「グローバルなバリューチェーンを生かし、原料のすり身調達から製造、販売までを自社で行っており、その調達力はさまざまな魚種を配合した『こだわり魚種』シリーズの開発にも生かされ、手軽にいろいろな魚種の味をお試しいただけることが当社のフィッシュソーセージの強みであると考えています。お子様から大人まで、毎日お召し上がりいただけるよう飽きのこない味付けにしています」(同)

 魚肉ソーセージ製品のなかでも、どのような製品が人気なのか。

「オーソドックスなソーセージの『1秒OPENおさかなソーセージ』や、健康志向の高まりから『DHA入りリサーラソーセージ』シリーズ、ご当地のおさかなを手軽に味わえる『こだわり魚種』シリーズなどが好評をいただいております」(同)

 同社はさらなる売上増大に向けて攻めの姿勢を崩さない。

「フィッシュソーセージは手軽に魚由来のたんぱく質を摂ることができます。また、2025年春の新商品では、皮膚の健康維持に役立つ栄養機能食品『おはだのごちそう D-HADA』を発売しており、新たな切り口での商品開発も進めています。当社が新長期ビジョンとして掲げる『持続可能なタンパク質の提供』『健康価値の創造』の実現に向けて、より人々の健康課題に貢献できる商品の開発に取り組んでいきます」(同)

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)