iPhone30万円超えでシェアはAndroid過半に…それでもアップル日本売上は13%伸長

●この記事のポイント
2026年9月に発表された初の折りたたみ「iPhone Duo」は、税込36万4800円から。MMD研究所の8月調査では、国内のAndroid利用比率が54.1%に達した。一方で、アップルの4〜6月期決算では日本での売上が約13%増えている。円安、実質賃金、スマホ新法も踏まえ、シェアより単価を重視するアップルの戦略と、二極化する国内スマホ市場を読み解く。
アップルが9月に発表した同社初の折りたたみスマホ「iPhone Duo」は、税込36万4800円からという価格で話題を集めた。ほぼ同じ時期、国内では「メインで使うスマホはAndroidが54.1%」という調査結果も公表されている。値段は上がり、利用者の比率は下がる。危うい構図に見えるが、アップルの決算書を開くと少し違う景色が見えてくる。公開データをもとに、日本のスマホ市場でいま何が起きているのかを整理したい。
●目次
- 「54.1%」はどこまで本物の変化か
- 「持っていないと気まずい」から「これで足りる」へ
- アップルは「台数」より「1台あたり」優先か
- 「ラグジュアリー化」の比喩はどこまで当たるか
- 二極化の先に何があるか
「54.1%」はどこまで本物の変化か
MMD研究所が9月17日に公表した「2026年8月スマートフォンOSシェア調査」(18〜79歳の男女4万人が対象)によると、メインで使うスマホのOS比率はAndroidが54.1%、iPhoneが45.6%だった。2月の同調査(Android 50.8%、iPhone 49.0%)と比べると、Androidが3.3ポイント伸びている。
もっとも、この数字だけで「iPhone離れが急加速した」と読むのは早い。2月調査の対象は69歳までで、今回から70代が加わった。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査では、70代のスマホは約7割がAndroidだ。対象年齢の拡大が、Android比率を押し上げた面は小さくないはずだ。さらに、これは「いま使っている端末」の比率であり、販売台数のシェアではない。
とはいえ、値上がりのペースは無視できない。国内のアップルストアでは7月18日に円安を理由とする価格改定があり、9月の新製品発表にあわせて再び値上げされた。発売時12万9800円だったiPhone 17(256GB)は、1年足らずで15万9800円になっている。9月18日発売のiPhone 18 Proは21万9800円から、Duoは最上位の2TBモデルで57万4800円だ。標準モデルのiPhone 18は今回発表されず、2027年春の投入が有力視されている。つまり今秋の新型は、すべて20万円超の上位機種ということになる。
「持っていないと気まずい」から「これで足りる」へ
10〜20代の間では、長く「iPhoneでないと話が通じない」空気があった。写真はAirDropで送り合い、連絡はiMessage。端末選びが、友人関係のインフラ選びとほぼ同じ意味を持っていたからだ。
この構図は、今も崩れてはいない。同じMMD調査で、18〜20代が最も多く使っている機種はiPhone 17だった。次に買う機種を決めているiPhoneユーザーの66.5%がiPhone 17を挙げており、既存ユーザーの定着ぶりも数字に表れている。
変化がはっきりしているのは、むしろ40代以上だ。40〜70代ではシャープの「AQUOS」が最多機種になり、Androidユーザーの次回購入候補はAQUOS、Google Pixel、Xperiaと続く。SNSと動画、キャッシュレス決済がストレスなく動けば十分、という判断である。ミドルレンジのAndroidでも、日常の用途で不満を感じる場面はだいぶ減った。
買い方の変化も効いている。2023年12月の制度改正で、回線契約とセットの端末値引きは原則4万円(税抜)が上限になった。20万円を超える端末の負担を、店頭の割引で大きく圧縮する余地はかつてより小さい。
「若い世代の『iPhoneでないと困る』という感覚は根強く、ここはすぐには崩れないでしょう。動いているのは、スマホを道具として割り切れる層です。価格がある線を超えたとき、その先の差額を払う理由を自分で説明できない人から順に移っている、と見るのが実態に近いと思います」(ITジャーナリスト・小平貴裕氏)
アップルは「台数」より「1台あたり」優先か
利用者比率が下がるなかで、アップルの業績はどうか。7月30日に発表された2026年度第3四半期(2026年4〜6月)決算で、売上高は1094億ドルと前年同期比16%増えた。iPhoneは約542億ドルで21.7%増、サービス部門は約307億ドルで12.1%増。サービス部門の粗利率は75.6%に達し、有料サブスクリプション数は15億を超えた。
注目したいのは日本だ。同期の日本セグメント売上高は65億5400万ドルで、前年同期の57億8200万ドルから約13%増えている。円安でドル換算の売上が目減りしやすい環境のなかでの増収である。同セグメントの営業利益は約30億ドル、売上に対する比率は4割を超える。
この数字から読み取れるのは、アップルにとっての優先順位だ。台数シェアよりも、1台あたりの売上と、その後に続くサービス収入を重く見ている。上位モデルの単価が上がり、iCloudやアップルミュージック、アップストアの課金が積み上がれば、利用者の一部がAndroidに移っても収益は伸びうる。中間層の一部流出は、少なくとも現時点では経営を揺るがす規模ではない。
ただし、アップルが中価格帯を捨てたわけではない点も押さえておきたい。12万円台のiPhone 17eを残し、標準モデルは春に回すとみられる(メモリー価格の高騰が背景と報じられている)。秋に高価格帯で利幅を確保し、春に裾野を拾う「二段構え」と見るほうが自然だろう。なお、アップルは国別の販売台数を開示していない。
「アップルの強さは、一度囲い込んだ利用者から長期間にわたって収益を得られる点にあります。台数が多少減っても、単価とサービス収入で補える構造になっている。ただ、サービス事業はある程度の利用者規模が前提です。上位機種への偏りが進みすぎれば、将来のサービス収入の土台が細るリスクもあります」(証券アナリスト・堀野剛志氏)
「ラグジュアリー化」の比喩はどこまで当たるか
値上げを続けても、業績は過去最高水準を更新している。この点だけを見れば、iPhoneは高級ブランドの戦い方に近づいている。ただ、比喩をそのまま当てはめると見誤る部分もある。バッグは1点売れば取引が終わるが、iPhoneは売った後にアプリ課金やクラウドの収入を生む「入り口」だ。開発者が参加するのも、利用者の母数があるからこそである。利用者を絞り込みすぎることは、Appleにとっても得策ではない。
日本の事情も、単純に「iPhoneが高い国」というわけではない。MM総研が7月に公表した39の国・地域の価格調査では、7月の値上げ後もiPhone 17 Pro(512GB)は日本が最安で、iPhone 17は3番目の安さだった。値札そのものは世界的に見て高くない。重いのは、円安と所得の伸びの弱さが重なった「体感価格」のほうだ。
実質賃金は2025年度まで4年度連続でマイナスだった。2026年に入ってからは7月まで7カ月連続でプラスに転じ、7月は2.4%増と持ち直しの兆しもある。それでも、数年分の物価上昇を取り戻したと実感できる水準にはまだ届いていない、という人は多いだろう。
もう一つ、日本はもともとiPhoneの利用比率が国際的に見て突出して高い市場だった。大手キャリアの販売奨励策が強力だった時代の名残もある。現在の変化は「転落」というより、世界の標準的な分布に近づく動きとも読める。
「円建ての価格が上がる一方で、家計が使える可処分所得の伸びは緩やかです。スマホは生活必需品ですから、高額機に払えない分は、機種のランクを下げるか、使う期間を延ばすかで調整されます。今回の数字は、家計のそうした防衛行動がデータに表れたものと見ています」(ファイナンシャルプランナー・荒井友美氏)
二極化の先に何があるか
日本のスマホ市場は、ゆるやかに二層に分かれつつある。上の層は、ProやDuoを選び、アップルのサービスに深く入り込んだ利用者。下の層は、AQUOSやPixel、Galaxy、中国メーカーのミドルレンジ機、あるいは旧型や整備済みのiPhoneで用を足す利用者だ。後者の中には、iPhoneをやめたのではなく「最新型を買うのをやめた」人も相当数含まれているはずだ。
この流れが続くかどうかは、いくつかの変数に左右される。春に出るとみられる標準モデルのiPhone 18がいくらで出るか。36万円台からというDuoが、どこまで数を売るか。円相場と実質賃金の回復が続くか。そして2025年12月に全面施行されたスマホソフトウェア競争促進法(いわゆるスマホ新法)で、代替アプリストアなどの選択肢が広がり、OSをまたぐ乗り換えの手間がどこまで下がるか。
アップルがシェアの数字に慌てている様子はない。決算を見る限り、その判断には合理性がある。一方で、利用者の母数に支えられたサービス事業を持つ以上、「持てる人だけが持つ端末」に振り切ることも考えにくい。54.1%という数字は、日本の消費者が価格に対してより冷静になったことの表れであり、アップルがそれを一定程度まで許容しているという構図を示している。
読者にとっての実務的な結論はシンプルだ。自分の使い方に、その差額を払う理由があるか。OSの名前ではなく、数年間の総支払額と必要な機能で選ぶ。スマホ選びが「見栄」ではなく「計算」で語られるようになったこと自体が、今回のデータのいちばん大きな変化かもしれない。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=小平貴裕/ITジャーナリスト)
【主な参照データ・出典】
MMD研究所「2026年8月スマートフォンOSシェア調査」
MMD研究所「2026年2月スマートフォンOSシェア調査」
すまほん!!(調査対象年齢の変更について)
NTTドコモ モバイル社会研究所(年代別OS比率)
Apple Newsroom「Apple、iPhone Duoを発表」
セレクトラ(iPhone 18 Pro/Duoの容量別国内価格)
ケータイ Watch(9月の既存モデル値上げ)
MM総研「世界のiPhone販売価格調査」(2026年7月)
Apple Form 10-Q(2026年度第3四半期、日本セグメント)
Apple 決算発表(2026年度第3四半期)
日本経済新聞(7月の実質賃金)
かいけつ!人事労務(2025年度実質賃金)










